孤独大国・日本で犬と暮らす人が幸せな科学的理由 麻布大学獣医学部教授の菊水健史さんに聞く

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「チンパンジーは人と同じく集団で生活しますが、基本的に欺きなどの駆け引きもある社会です。育児にも積極的に参加しませんし、仲間と協力するより一匹だけエサを食べたり、オスがメスを茂みに連れ込んでバレないように交尾したりもします。他との協力関係に依存する度合いが人より圧倒的に低いですし、犬よりも低いですね。

人の2歳児がわかる指差しの理解もチンパンジーは苦手ですが、犬は指で差したものがわかります。アメリカの研究者が行った実験では、あるボーダー・コリー犬に指差しでアイテムの名前を告げて持ってくるように指示し、知らないアイテムの名前を教えていったところ、1022もの単語を覚えました」

野生動物だった犬が共生できるようになった理由

犬ももともとは野生動物だったはずなのに、人に対する理解力が高まり従順になって共生できるようになったのはなぜなのだろうか?

麻布大学獣医学部教授の菊水健史さん(撮影:大澤誠)

「人が犬を家畜化したことが一番大きな理由として考えられています。正確なところはまだわかっていませんがおそらく3、4万年前に犬の祖先と人が出会い、共同で狩りをして獲物を分け合うような共同生活をはじめたと考えられています。リードをつけていたわけではありませんから、肉食獣に対する番犬のような働きもしていたでしょうね。

イスラエルにある1万2000年前の遺跡では、老女とともに埋葬された犬の骨が見つかっています。その頃にはすでに人にとって犬は最良の友となっていたのです。家畜化した犬は生きるために人に依存して、人とのコミュニケーション能力を高める必要がありました。人も従順で協力的な犬を最良のパートナーにしてきました。そのようにして人と絆を育み共生できる犬だけが生き残ってきた長い歴史があるのです。いい意味でお互いを利用し、依存し合ってきたわけですね」

狩りをしなくなった近代社会で、犬にとって人はますます不可欠な存在となった。一方、人は孤独な社会を生きる心の友として、マンションのような狭い家でも共に暮らせる犬を選んで飼う人が増えた。

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