多選・高齢議員が跋扈、「地方議会」の悲惨な現実 町村議員の8割が60歳超、若手をくじく報酬事情

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統一地方選挙
地方議会では無投票、多選議員が増えている(筆者撮影)

統一地方選の後半(市区町村長の選挙などと衆参の補欠選挙)が終了した。今回も総じて地方選への関心は低かった。その典型が無投票選挙の多さだ。特別区長選1(東京・中央区)に加え、市長選では25市、市議選では14市(238人)、町村長選では70町村、町村議選では123町村(1272人)が無投票で当選。さらに、北海道や長野県、東京都など計20町議選では立候補者が定数を下回る「定数割れ」の事態になった。なぜ、議員のなり手がいないのか。無投票、多選議員の増加がもたらしている弊害に迫った。

長野県岡谷市。古くは養蚕、製糸産業で栄えた人口約4万6000人の地方都市である。今回の市議選では定数18に対し立候補者は17人で、1936年の市制施行以来初の定員割れとなった。全国の市議選では唯一の定数割れだ。今回の選挙では、現職18人のうち9人が高齢や9月の市長選出馬などを理由に立候補しなかった。9人の不出馬表明時期が遅かったこともあり、新人の立候補は7人にとどまった。

前回は定数18人に対し立候補20人、前々回は21人でかろうじて定数を上回っていた。とはいえ投票率は2回とも59%台で全国平均(40%台半ば)よりもはるかに高い。しかも、市には信州・市民新聞グループが発行する岡谷市民新聞があり、1万9000世帯の市で1万3690部を発行(普及率70%)している。そんな地元意識の高い土地柄なのに、なぜ定数割れに陥ったのか。

定数割れの背景に選挙と金

原因の一つについて、地元メディアは選挙にかかる金の問題があると指摘している。市の選挙公営費がごく一部に限られ、他の自治体よりも選挙に金がかかるのだ。

「ポスター掲示板の設置と選挙公報の発行は市が負担している。選挙運動用の自動車代、ポスターやビラの作成費はすべて候補者負担です」(選挙管理委員会)

さらに、今回は特殊な事情もあった。高齢や9月の市長選出馬などを理由にした引退・不出馬の9人の大半が後継者を擁立できず、不出馬表明の時期も今年3月以降が多く、時間的にも新たな立候補者が出にくい状況だったという。

今回、無投票で選ばれた17人の内訳は40代2人、50代6人、60代6人、70代3人となっている。前回は20代1人を含め40代までが4人いたが、今回は2人のみ。若手・中堅世代の立候補者が圧倒的に少ないことが分かる。地元に住みながらも、この世代は地方政治に魅力を感じていないということだろう。ここが最大のポイントなのかもしれない。

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