多選・高齢議員が跋扈、「地方議会」の悲惨な現実 町村議員の8割が60歳超、若手をくじく報酬事情

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高齢化も大きなネックだ。同調査によると議員の年齢構成別は、「60歳以上70歳未満」が37.6%でもっとも多く、次いで「70歳以上80歳未満」の36.8%。平均年齢は65.2歳、最年長は92歳となっている。若者や中堅世代が村から流出し、議員は高齢者が中心。そんな自治体の様子が目に浮かんでくる。

新たななり手が出てこない地方議会は、無投票で当選を重ねたような多選・高齢議員のたまり場と化していく。先の調査では、町村議会の議員は60歳以上が77.4%を占めている。50歳未満は9.7%と1割にも満たない。日本社会以上に議会の高齢化が急ピッチで進んでいるのだ。在職年数も長期化し、8年以上(3期以上)が5割超。24年以上(7期以上)が960人、全体の9%もいる。

高齢化・多選議員の常態化がもたらす弊害

その結果、長老議員が幅を利かすことになり、さまざまな弊害が生じている。新人議員や少数会派、女性議員などに対する同調圧力やいじめ、脅し、セクハラなどの報告が後を絶たない。議場においても、居眠り、職員への一般質問作成依頼、欠席常習犯、質疑ゼロ議員など、「税金ドロボー」と呼ばれてもしかたがない議員は多い。

筆者もある地方議員にこう打ち明けられたことがある。

「いつも議案に反対する議員がいるんですけど、対案があるわけでもないし、そもそも言っていることが支離滅裂。こんなこと言ったら失礼かもしれないけど、前回の選挙で無投票で議員になった人なんです。議員になるための勉強もしていないようだし、政治家としての資質に問題があるとしか思えない。市民に申し訳ない気持ちです」

地方議会の長老支配、劣化が各地で進んでいるのかもしれない。問題は、犯罪にまでなるケースがあることだ。今年1月、奈良地裁で御所市の火葬場事業をめぐる汚職事件の初公判が行われ、贈賄側の建設会社元会長らが起訴内容を認めた。

収賄容疑で逮捕、起訴されたのは70歳の市議。当選8回のベテランで議長経験もある。前回(2022年)は6位(定数13)で当選していた。起訴当時、「市議会最古参のドンとして市側に影響力を行使することで親しい業者に利益を誘導し、私腹を肥やしていた」などと報じられた。

人口減、少子化の大波にあらがうことができず、財政悪化、地域経済縮小で衰退化に歯止めがかからない。そうした課題解決に取り組むべき地方政治家が無投票で選ばれ、多選・高齢化し、議会そのものが特殊社会になっている実態を改めなければ、地方活性化など夢のまた夢である。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログでは、最新の病状などを掲載中。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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