出口治明、部下の相談を「嫌や」と拒否し続けた真意 部下を育てる基本は「責任を持たせること」

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「仕事を与え、部下を忙しく働かせる」のは、上司の務めです。忙しく働かせると、部下の不平不満を助長すると思われがちですが、僕は「その逆」だと思います。人間は「何もやることがない状態」を嫌います。フランスの哲学者・パスカルは、「退屈」について考察し、

「人間の不幸などというものは、どれも人間が部屋にじっとしていられないがために起こる。部屋でじっとしていればいいのに、そうできない。そのためにわざわざ自分で不幸を招いている」

と述べています。自分を不幸にしてまで部屋にじっとしていられないのは、「人間は、退屈に耐えられない」からです。

仕事を与えるのは、部下への愛情

したがって、上司は、部下を退屈させないためにも、適度に仕事を与え、任せなければなりません。そうすれば仕事を与えられた部下は、

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「オレは信頼されているから、仕事を与えられているんだ」

「上司が認めてくれているから、任されるんだ」

と意気に感じるはずです。

仕事を与えすぎて部下を疲弊させてはいけませんが、それでも「仕事をまったく与えない」ことに比べたら、「少しくらい忙しくさせたほうが、部下は喜ぶ」と思います。退屈しないですむからです。

「仕事をしなくても給料をもらえるなんて、恵まれている」と考える人は、仕事をしたことがない人です。

例えば、同僚たちは仕事を任されているのに、自分だけすることがない――1日中、何もせずにデスクに座っていなければならないとしたら、「恵まれている」どころか、苦痛でしかありません。

「上司が仕事を与える」のは、愛情の裏返しです。部下が誰1人、退屈しないように、部下に仕事の楽しさを感じてもらうように、仕事をバランスよく与えていくのが上司の仕事です。

出口 治明 立命館アジア太平洋大学(APU)学長

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でぐち はるあき / Haruaki Deguchi

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2005年に同社を退職。2008年にライフネット生命を開業。2017年に代表取締役会長を退任後、2018年1月より現職。『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『人類5000年史Ⅰ』(ちくま新書)、『「全世界史」講義Ⅰ、Ⅱ』(新潮社)、『仕事に効く教養としての「世界史」Ⅰ、Ⅱ』(祥伝社)、『本の「使い方」1万冊を血肉にした方法』(角川oneテーマ)、『教養は児童書で学べ』(光文社新書)、『ゼロから学ぶ「日本史」講義Ⅰ』(文藝春秋)など著書多数。

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