出口治明、部下の相談を「嫌や」と拒否し続けた真意 部下を育てる基本は「責任を持たせること」

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日本生命で部長になったとき、僕は部下に対して、

「相談は受け付けない」「相談は、嫌や」

と公言していました。部下の管理を放棄しているわけではありません。僕なりの考えがあってのことです。どうして僕は、部下の相談に乗らなかったのか。それは、「部下のほうが、仕事の範囲が狭いからこそ、“深い”」からです。

一般的に、「上司は部下よりも経験を積んでいるので、仕事に詳しい」と思われていますが、そうとはかぎりません。

部で受け持っている取引先が100社あり、部下が10 人いたとします。すると部下は、一人につき「10社」受け持つ。部長は一人で「100社」を見ることになります。社員は「狭く、深く」、部長は「広く、浅く」取引先と関わることになるわけです。

当然、取引先について詳しく知っているのは、部長よりも部下です。部下から、「どうして出口さんは、僕が困っているのに相談に乗ってくれないんですか?」と泣きつかれても、僕は100社と10社のロジックを持ち出して……、

「そんなもん、嫌や。おまえのほうが、その会社についてオレよりも詳しく知っているじゃないか。よく知らないヤツが、詳しく知っているヤツの相談に乗れるわけがない」

と、突き返していました。

「事前に案を考えてきた部下」にだけ相談に乗る

ただ、まったく相談に乗らなかったわけではありません。

「『自分は解決策としてA案とB案を考えた。A案のほうが最善策だと思うが、意見を聞かせてほしい』という相談なら、話は聞くよ。何の案も持たない相談が、オレは嫌や」

自分で考えもせずに「答えを聞きに来た部下」は相手にしません。事前に案を考えてきた部下にだけ、相談に乗っていました。

仕事を任せるときは、

「与えた権限の中で、部下にめいっぱい考えさせること」

が必要です。上司が安易に相談に乗ったり、すぐに答えを教えたり、すぐに手直しをしたりするようでは、部下を育てることはできません(もちろん、時間は有限なので、タイムリミットを設けておく必要はあります)。

権限を与えて任せた以上は、責任を取らせる。権限を与えた部下には「めいっぱい知恵を出させる」ことが肝要です。

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