出口治明、部下の相談を「嫌や」と拒否し続けた真意 部下を育てる基本は「責任を持たせること」

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一方で上司も、「部下の仕事の責任は、最終的に自分(上司)にある」という秩序の感覚を持っていれば、部下を把握しようとするはずです。人間心理として、「自分の知っていることで責任を取るのはいいけれど、知らないことで辞めさせられるのは嫌だ」と思うものだからです。ビジネスでは「自分は知らなかった」が通用しないわけですから、「部下のことをもっとよく知る」しか方法はありません。

刑法の世界は、故意や過失がなければ、責任を問うことはできません。しかし僕は「刑法とビジネスは違う」と思います。「故意や過失があろうとなかろうと、責任を取る」のが上司であり、「責任を取れる上司」がいるからこそ、組織は強くなるのです。

上司の仕事の基本は「人にしてもらう」

「人間は、愚かである」

が僕の持論です。要するに、自分1人でできることは「たかが知れている」わけです。どれほど賢い人でも、せいぜい「2~3人分の働き」しかできません。何度も繰り返し書いていますが、大きな仕事を成し遂げたいと思うのなら、「人に任せる」ことが得策です。

小さな食堂でも、1人で切り盛りをするのは大変です。注文を聞いて、お水を出して、料理をつくって、運んで、お皿を洗って……。繁盛店にしたいのなら、従業員を雇って、仕事を分担するしかありません。

人間の能力は、それほど高くありません。1人でたくさんの仕事を抱えることはできないのです。優秀な上司でも「部下2~3人分の仕事量」をこなすのが精一杯でしょう。だから上司は、自分で仕事を抱えようとせず、部下に仕事を任さなければなりません。「人にしてもらう」のは、上司の仕事の基本です。

もし、「サボっている部下」がいたら、それは、「サボっている部下」が悪いのではなく、上司が悪い。なぜなら「仕事を与えていない(仕事を任せていない)」からです。「人にしてもらう」という上司の基本を忘れているからです。

仕事の途中に、何度もタバコを吸いに行く部下がいたとします。この部下がタバコを吸えるのは、「時間が余っている」からであり、「上司が、仕事を与えていない」からです。部下に、十分な仕事を与えていたら、タバコを吸う時間もないはずです。

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