さらに、例えば北欧諸国は少子化問題解決の優等生のように思われているが、出生率は低下を続けている。所得水準が上がっても、子供関連、教育関連の政府支出が極めて高くても、少子化は進んでいるのである。
第3に、日本のB村が子ども手当などを大幅に増やしたら、出生率が大幅に上がった「奇跡の村」などと言われ、もてはやされている。だが、これは子供を産もうとした夫婦が「どこで子育てをしたら得か」を考えて、単にA町からこのB村に移住した要因が大きいのである。B村で出生率が奇跡のように上がったように見える一方、その他の町ではさらに出生率が絶望的に下がっただけなのである。
そして、百万歩譲って、経済的な理由が一部の家庭にとって子供を持たない理由であるとしよう。しかし、その場合の経済的理由とは、5万、10万、100万円などではなく、2億円などというレベルの話なのである。
すなわち、女性が大学を出て会社に就職した場合、30歳前後で会社勤めを退職し、子育てをして、数年後に賃労働を再開し、パートタイムや非正規社員として働いた場合、子育てをせずに大卒後に就職した会社で定年まで働いた場合に比べて生涯所得が2億円前後少ないというシミュレーション結果を、多くの調査が示している。
少子化の原因は社会のあり方の問題
だから、働く夫婦に子育てのための所得支援をするのであれば、各夫婦に2億円ずつ配らなくてはならないのである。すなわち、少子化の原因は、社会のあり方の問題であり、その一部は経済的要因であるが、その要因をもたらしているのは日本社会における都市部での企業での働き方にある。
それは政府の責任ではないうえに、政策で直接子育てを支援したり、現金をバラまいたりしても、解決できる次元のものではないのだ。「異次元の少子化対策」などと言っているが、その最低100倍、3次元ぐらい違わないと無理なのだ。
しかし、解決策はあるし、簡単だ。女性が子育てのために退職し、その後転職したときに、その女性の人的資本の価値に見合った、以前の給料と同等の水準で働けるような民間労働市場に、日本の労働市場が変わればいいだけだ。
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