「少子化は最悪だ」という日本人は間違っている 日本の「人口問題の本質」とは一体何なのか

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だが、この反転が始まる。19世紀後半以降の欧州では、経済水準の上昇は出生率を低下させるほうに働くようになった。これは20世紀にそのほかの地域にも広がり、21世紀には世界的な現象になったのである。

理由は、子供が死ななくなったことにより、少数の出産でも十分な数の子息を残せることになったからであり、同時に、賃金水準が上昇、所得機会が増えたことから、出産育児に時間を使うよりも、働く時間を増やすことで所得が増加するようになったからである。

さらに、賃金の上昇、所得機会の増加は、高等教育による生涯所得の増加をもたらしたから、子供にかける教育期間と費用を増加させた。教育投資を増やしたのである。

経済水準の上昇が、労働への投資と教育への投資を可能にし、家族全体で人的投資をしたのである。これが、さらなる所得水準の上昇、経済発展をもたらし、少子化は傾向として完全に定着したのだった。

所得水準を上げるだけでは少子化を深刻化させるだけ

これを逆流させる力は、どこにも存在しない。不可能なのである。さらに働きやすい環境を作り、またカネをばらまき、教育コストを低下させれば、さらに少数精鋭の子供たちを育てるようになるだけだ。すなわち、むしろ少子化を促進させる効果のほうが明確に存在する。

つまり、「そもそも①」=少子化は経済発展してきた以上、止められないのである。少子化を止めようとして行われている政策は、むしろ少子化を進めるものだ。また「そもそも③」、つまり、所得水準を上げることは少子化の解決策であるどころか、深刻化させるのである。

では、なぜ有識者も政治家も、カネをバラまくことが少子化対策となると主張しているのだろうか。票のため、少子化対策にならなくても、バラまく口実があればいいという理由は明らかに存在する(子供を増やすことと無関係な経済補助がほとんどである)。しかし、良心的な政治家たちや有識者たちまで、なぜ「経済的な支援が子供を増やすことになる」と盲信してしまっているのであろうか。

それは、アンケート調査で「なぜ結婚しないのか」と聞かれて、「所得が安定しないから」という答えが一定数あるからだ。また、結婚している夫婦に「なぜ子供を持たないか」あるいは「もう一人持たないか」と聞くと、「カネがかかるから」と答えるからである。

これは大きく誤ったアンケート結果の解釈である。

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