「口コミ星1の病院」患者離れに常連が喜ぶ不条理 理不尽な要求に医師は「サンドバック状態」

拡大
縮小

しかし、のちに木村さんがよくよく話を聞くと、専門医のすすめる治療を拒否していたことがわかったため、このケースでは不要と考えられる検査ではなく、専門科による再度の受診・治療をすすめたそうだ。結局は話が折り合うことはなかった。

関連があるとまで言い切れないが、口コミ以降、新患が減少している。

仕事中の様子(本人提供)

Googleマップの口コミには、期待する治療や薬の処方、検査を受けられなかった患者から、不平を書かれたり、コメントなしで「星1」にされたりすることがある。

特に最近は、患者が目の前の医師の話を聞こうとせず、ネットで仕入れた治療法をとにかく受けたがるケースも少なくないそうだ。

「自費ならまだしも、特に保険診療ではできない治療もあって困っている」

木村さんとしては、医学的に正しい改善方法をすすめたつもりだった。納得できない口コミを書かれ、訪れる患者が減ったとすれば、一人の医師としても、スタッフを抱えて経営する院長の立場としても、見過ごせない事態だった。

医師が口コミの返信をためらう理由

開業以来初めて返信しようと、文面を作り、知り合いの医師らに意見を求めると「穏便に済ませよう」「謝るだけにしたほうがいい」と後ろ向きな態度だったという。

同業者が消極的だったのは、医学的に正しい返答でも、患者のプライバシーに関わる情報を公にする法的なリスクのほか、返信きっかけの炎上を心配したからだった。

患者から実名で言いがかりをつけられることもあるが、匿名よりさらに守秘義務にふれることを恐れ、何も書けなかった。

また、「待合室が狭い」「受付時間を過ぎて行ったら断られた」という口コミの指摘は事実だが、それを理由に星1をつけられたときにも納得できなかった。

新型コロナの発熱外来として、スタッフが満身創痍になったときも「時間がかかった」と星1にされ、むなしさを感じたこともあった。

次ページ低評価がついて患者が離れたら…常連が喜ぶ
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT