10歳から歌舞伎町の「トー横少女」が帰宅できぬ訳 父からの虐待を、愛情として受け止めていた
中学3年生のモカさんに学校について尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。
「私、小学校4年生からほとんど学校には行ってないんですよ」
ホストのお兄さんの仕事が終わるのはいつも朝方で、モカさんはそれまでの時間を歌舞伎町の路上やネットカフェで過ごしていた。時には、ホストクラブのバックヤードでお兄さんの仕事が終わるのを待たせてもらうこともあるそうだ。もちろん警察に補導されて、実家に連れ戻されることも何度もあった。しかし、そのたびに実家を抜け出し、お兄さんのいる歌舞伎町へと舞い戻る。そんな日々を繰り返してきた。結果、歌舞伎町にたどり着いた10歳から今まで、学校にはほとんど行っていないという。
トー横界隈の古株と思われたくない
諸説あるが、「トー横界隈」や「トー横キッズ」といった言葉やカルチャーが生まれたのは2019年頃。モカさんと僕が出会ったのは2022年で、彼女が歌舞伎町に通うようになったのがそこから5年前。出会ってから1年が経ちこの本を執筆している2023年から数えると6年前の2017年。モカさんが歌舞伎町で過ごすようになった当初、まだ「トー横界隈」や「トー横キッズ」という言葉は存在しなかったのではないだろうか。当時の彼女がここで知り合った家出少年・少女のコミュニティーこそが「トー横界隈」の走りであったに違いない。
今ではトー横界隈と呼ばれるようになった植え込みの近くに座るモカさんに、僕は「じゃあ古株ですね。トー横界隈のスタート時からいるんだから」と何気なく言った。するとモカさんは、少しだけ困ったような素振りで、髪をいじりながらこう答えた。
「うーん……。それ(古株であること)を言うと、みんな怒るんですよね。古いからってイキがってるなよみたいになるんで。そういうのはみんなには言わないようにしてます」
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