サムスン「メモリー減産」でも消えない2つの不安 業績低迷一時的だが、長期的な展望も微妙

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サムスン電子は第1四半期決算で営業利益が前年同期比96%落ちこみ、メモリーの減産を発表した(写真:SeongJoon Cho/Bloomberg)

「やはり」という声も漏れた。

韓国のサムスン電子が4日7日発表した2023年第1四半期(1〜3月)決算では売上高が63兆ウォン(約6兆3000億円)と前年同期期比19%減少、営業利益は6000億ウォン(約600億円)と同96%も落ち込んだ。「予想よりも悪い」と驚きがあがる中、さらに主力のメモリー半導体を「一定水準までメモリー生産量を下方修正する」と減産を公し、韓国は騒然となった。

韓国経済新聞は、「"人為的な減産"はないというこれまでの方針から電撃的に旋回」と書き、「突然、戦略を修正した背景には半導体の出荷不振と価格が予想よりも急落していることを示唆している」と半導体市場の縮小を指摘している(4月8日)。

同社の営業利益は2009年以来14年ぶり最低の数字といわれ、部門別の業績発表はなかったが、主力の半導体で4兆ウォン(約4000億円)近くの赤字と報じられた。半導体はサムスン電子の売り上げの約30%を占める。そして、その半導体は韓国の輸出全体の約18%を占めるいちばんの稼ぎ頭。韓国経済にとっては半導体市場の動きは屋台骨に直結する。 

メモリーは供給過多に陥っていた

生産調整を強いられた背景にはメモリー半導体の供給過多がある。IT企業などの調査を行うアメリカのガートナー社は今年1月、「電子機器メーカーが需要増を見込み、保有していたメモリーの在庫を2022年の半ばから消化し始めたためメモリー市場は需要の大幅な崩壊の兆しを見せている」と分析していた。

2020年に始まったコロナ禍により在宅勤務が増えるなど、メモリー半導体を使うパソコンなどの電子機器用品の売り上げは上昇し、メモリー半導体の需要も伸びた。ところが、ウクライナ情勢などの影響もあり世界経済が停滞すると、在庫がだぶつき始めた。

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