サムスン「メモリー減産」でも消えない2つの不安 業績低迷一時的だが、長期的な展望も微妙

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これによりメモリー半導体の価格は昨年下半期から10〜20%ほど下落。韓国でも在庫超過が取り沙汰されたが、3カ月ほど前、同社はこれをきっぱりと否定していた。

これは市場での支配力を強化する目的というのがもっぱらの見方だった。しかし、韓国のアナリストの間では遅かれ速かれ減産に踏み切るだろうと言われていた。全国紙記者は言う。

「昨年9月にはアメリカのマイクロンやSKハイニックスは減産に踏み切っていましたから、サムスンもやるかもしれないという声はありました。ただ、半導体市場のサイクルは3〜4年といわれて動きが速くこれまでも似たような危機がありましたが、サムスンの場合はあえて投資を拡大することで乗り切ってきた過去があります。

たとえば、DRAMの熾烈な競争が行われていた2008年、サムスン電子は同年10〜12月に赤字を出しますが、生産調整の代わりに大胆な投資を行い、主力の80ナノDRAM工場を50ナノへと一気に推し進めました。

当時、他社は60ナノへ移行していた時期でしたからひと段階飛び越えた。工場の稼働率が落ちていたのを次世代のDRAMへと変えて、他社が持ちこたえられなくなった後は、次世代メモリーで一気に他社をふるい落として引き離しました。ですから今回も見方は半々だったのですが」

メモリー事業中心から脱するべきとの声

ただ、サムスン電子の生産量の減産は市場で歓迎され、同社の株価は反動。発表前日よりも4.3%上昇した。競争が緩和され、価格が安定するとみられたためだ。サムスン電子の業績も今年下半期には回復するだろうと言われるが、「問題はその先」と前出記者は話す。

韓国では、これから訪れるAI時代に向けて、サムスンはメモリー事業中心から脱するべきだという声が上がる。

韓国の毎日経済新聞は、「メモリー頼みの天水場的な事業構造から抜け出さなければ危機は繰り返される」とし、「AI時代を掌握するために非メモリーファウンドリー(委託生産)企業が連合体を強化していることから、サムスン電子やSKハイニックスがメモリ中心から抜け出せるよう全方位的な支援と協力が必要だ」(4月8日)という投資業界関係者の話を引いている。

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