サムスン「メモリー減産」でも消えない2つの不安 業績低迷一時的だが、長期的な展望も微妙

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また、どこがさらに投資するかにこれからの勝負がかかっているとし、「これからChatGPTなどのAI産業が急成長する中でメモリー半導体の需要は爆発的に増え、スーパーサイクル(半導体の好況)がやってくる」(朝鮮日報、同)という見立ても出る。AI時代を制する者が勝者になるというわけだ。

韓国で今最も意識されているのが台湾のファウンドリー、台湾積体電路製造(TSMC)だ。同社は1987年に設立された半導体専門ファウンドリーで、アメリカのアップルを顧客に持つなど、この分野では58.5%の世界シェアを占め、2位のサムスン電子(15.8%、2022年第4四半期)を大きく引き離している。

多様な要求に合わせて即時製作できるという強み

同社の第一四半期の業績はまだ発表されていないが(4月20日予定)、半導体市場の不況にもかかわらず、前年同期比で40%増が見込まれるという(毎日経済新聞、4月7日)。これはアップルやAMDなどファブレス企業の多様な要求に合わせて即時に製作できる能力を備えていることが他の追随を許さない理由とされる(同前)。

同社は昨年12月には3ナノチップの量産を始めた。サムスン電子はTSMCよりも早い昨年6月に3ナノの製造に着手したが、生産能力の差により市場占有率の差が広がった。同社とサムスン電子は共に2025年量産を目標に2ナノ工場を開発中だ。

韓国ではTSMCが大きく成長した背景に政府支援を挙げ、韓国も政府とのワンチーム体制を構築せよとする声があがる。前政権で足踏みしていた税金の控除率を引き上げる「半導体特別法」は先月、国会本会議をようやく通過した。

立法化されれば、大企業は8%から15%、中小企業は16%から25%税金が控除される。ちなみに台湾では研究・開発への投資額については25%、設備投資額については5%の税金が控除されている。

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