入江聖奈「カエル研究」との二刀流選ばなかった訳 「逃げ道」を作らないために区切りをつけた

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ボクシングとの出合いは小学2年生のとき。自宅にあったボクシング漫画『がんばれ元気』を読んで感動し、鳥取県米子市内のジムに通い始めた。だが、ボクシングが「純粋に楽しかった」時期はそう長くはなかったという。中学校時代は中学の部で全国大会2連覇。高校3年生で全日本女子選手権のシニア(大学生、社会人)初優勝。19年には世界選手権で8強入り。女子アマチュアボクシング界で見る見る頭角を現した入江さんには、早くから周囲の「五輪」への期待がのしかかった。

「五輪が絡むようになると、辞めたいから辞めますとか言える世界じゃなくなりました。もちろん根本は大好きなんですけど、最後までやらなきゃいけない、という責任のほうが大きくなりました」

だが、「好き」の感情だけでいられなくなるのは、どの道も突き詰めれば同じ、と入江さんは考えている。

「私もしんどいことがあると、すぐに辞めたいって思うタイプなんです。でも、好きなことをやっていて、しんどいなって思うのって、努力しているからこそ出てくる感情じゃないですか。それって前進している証拠だと思うんです」

好きだから守りたい

だから、と入江さんはこう続けた。

「もし私がこの先、もうカエルなんて見たくないって思うときがあるとしたら、それは研究者として確実にステップアップしている成長の証しと受け取りたいって考えています」

このタフなメンタルコントロール術はボクシングで培ったものだという。

「ボクシングを辞めたいな、練習しんどいなって思うことはいっぱいありましたが、そういう過程の積み重ねで金メダルまでたどり着けたと思うので、自分に生まれるネガティブな気持ちも大切にしていきたいなってずっと思っています」

金メダルを得た経験はこれからも生きていく。

「ボクシングとカエルは分野が全然違いますが、私の中ではボクシングを究めたつもりでいますし、それはカエルの道でも生きると確信しています」

これから「好き」を究めようとしている入江さん。どんな将来を見据えているのか。

「やっぱりカエルの研究者になりたいです。研究者の道も結果が大事なところがありますし、誰もが目指してなれる職業でもないと思います。それでも、カエルは好きだからこそ守りたい。それに寄与できる研究者になりたいですね」

金メダリストとしての知名度やSNSも使って、魚類学者のさかなクンのような発信力のある研究者を目指す。

(構成/編集部・渡辺豪)

※AERA 2023年4月10日号

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