疲労時に効果絶大、「集中力」を呼び戻す簡単テク パズルを解く実験でパフォーマンスが20%向上

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ここで注意喚起です。こうしたフェイシャル・フィードバックによる効果を得るには、自分の感覚を信じることが重要です。Noahら (2018)による検証実験を紹介します。

Noahらは、実験参加者に、ペンを歯、あるいは唇に挟みながら、漫画を読み、評価してもらう実験を行いました。ペンを歯に挟むと大頬骨筋が動き、笑顔が形成されます。唇に挟むと口輪筋が動き、笑顔が抑制されます。このとき、実験参加者をビデオカメラで撮影する、しないの2つの条件にわけています。

実験の結果、ビデオカメラで撮影しない条件において、ペンを歯に挟んだ参加者は、唇に挟んだ参加者に比べ、有意に漫画を楽しいと評価しました。一方、ビデオカメラで撮影する条件において、ペンを歯に挟んだ参加者と唇に挟んだ参加者に評価の違いは見られませんでした。

つまり、カメラがないとき、フェイシャル・フィードバックによる効果は存在し、カメラで撮影されているとき、その効果はなくなる、ということです。カメラの存在により、「観察されている」という感情が参加者に引き起こされ、自身の表情筋から送られて来る感覚的なフィードバックに鈍感になった可能性が指摘されています。また、自身のフェイシャル・フィードバックによる弱いシグナルよりも、客観的な手がかり、つまり、実際の漫画そのものに注意を向け、客観的な理由に基づく判断をしようとした可能性があると考えられています。

注意喚起をもう一つ。眉を引き下げ、眉間にしわをつくり、唇を上下からプレスし、一文字に結ぶという集中表情。この表情は、怒っているときの表情と共通しています。そのため、集中の対象のみ(本、問題、資料など)に向け、むやみに他者には向けないことです。

周囲の環境や疲労が原因で、集中したいのに集中できない。そんなときは、眉間にしわを寄せ、唇を一文字に結ぶ。そして、これら表情から送られている感覚を体内に宿す。むやみに他者には向けない。これが、自身の身一つで集中力を高める方法です。「ここぞ」というときにぜひ試してみてください。

参考文献
Noah, T., Schul, Y., & Mayo, R. (2018). When both the original study and its failed replication are correct: Feeling observed eliminates the facial-feedback effect. Journal of Personality and Social Psychology, 114(5), 657–664. https://doi.org/10.1037/pspa0000121
Richesin, M. T., Oliver, M. D., Baldwin, D. R., & Wicks, L. A. M. (2020). Game face expressions and performance on competitive tasks. Stress and Health: Journal of the International Society for the Investigation of Stress, 36(2), 166–171. https://doi.org/10.1002/smi.2899
清水 建二 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役

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しみず けんじ / kenji shimizu

1982年、東京生まれ。防衛省研修講師。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本顔学会会員。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社がある。

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