国庫に返納する1000万円は親に借りた。
卒業した後は、民間の病院で働いた。
週5日勤務して、週1日アルバイトをした。
2年間で、親への借金は返し終わった。
「借金もなくなってどうしようかな~? と思って。開業でもしようかと。銀行から5000万円くらい借りて開業しました。
医師免許があって、健康でしたし、メンタルクリニックなら採算が取れる可能性が高いので、苦労せずに借りられました。
お金と時間に余裕がある人が多い山手線の内側で開業しようと思いました。特に時間がある人が多い学生街でやろうと思っていろいろ調べたんですが、まだ“早稲田”に精神科はありませんでした。新宿区だし、賃料も安かったので、ここにしました。下町な雰囲気は気に入っていますね」
精神科は他の診療科目の病院と比べるとダントツの勢いで増えている。
かつては「精神科に通うのははばかられる」というイメージがあったが、現在はずいぶんハードルが下がった。
差別化のためにYouTubeを始める
早稲田メンタルクリニックが開業したのは今から5年ほど前。働き方改革の前であり、働きすぎで心を病んでいる人が多かった。つまりサラリーマンの精神科のニーズが高かった。多くの客はインターネットで病院を見つけて訪れていた。
「22時までの営業にしました。東京で最も遅い時間まで営業しているメンタルヘルスクリニックにしました。ただ新宿区はかなりの激戦区なので、それでもなかなか見つけてもらえませんでした。
最初は月10万円くらいかけてウェブに広告を入れていたんですけど、当然もっとずっとお金かけている病院もあるわけです。そこと争い続けるのも不毛だと思ってやめました。
その代わりに、YouTubeを始めました」
益田さんは常々、患者さんに病気の説明をする時間がもったいないと考えていた。その時間はむしろ、診察にあてたい。
「最初は紙に印刷して渡していたんですが、みんな読まないんです。それではとブログに書いてみたが、それも全然読まれない。
だったらと思って動画にしたんです。動画だと見てもらえました。そしてその動画は一般の人にも広く見られて、一石二鳥になりました」
動画撮影は全部1人で行っている。
臨床の合間や、夜、休日などの時間がある時に撮影をしている。
「診察の時に、
『あれ? この説明で正しいのかな?』
とか思うときが結構あるんです。『臨床的な疑問』って言うんですけど、それを後からちょこちょこ調べて、その内容を動画にします。説明が弱かった部分を、調べ直してもう一度きちんと説明することもあります。
また診察室の中では社会的な問題を話すことはよくあります。患者さんと会話したニュースの話を動画にすることもあります」
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