東大入学後に全員「教養学部」で学ぶ深い理由 「普遍的教養」の重要性を強調していた南原総長

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東京大学は4年ぶりに学生・保護者揃っての入学式を行います(写真:Ystudio/PIXTA)
コロナから4年目の春。今日、東京大学は4年ぶりに学生・保護者揃っての入学式が行われます。東大では1・2年の間全員が「教養学部」で学び、その後学部を選択するリベラルアーツ制を取っているため、本日式典に参加する学生は文系理系関係なく、まず教養学部生として幅広い科目を学びます。
実はこの制度、戦後から始まったもので、戦前までは教養学部自体がありませんでした。当時の総長・南原繫が1949年の東大入学式で語った式辞には、日本でも珍しい「教養学部制」が生まれた経緯と、若き学生たちへの願いがこめられていました。
東京大学名誉教授で自身も2015年に読んだ式辞が話題になった石井洋二郎氏が上梓した『東京大学の式辞 歴代総長の贈る言葉』より、一部抜粋・再構成してお届けします。
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教養の理念と知の総合化

東京大学は1949年(昭和24年)5月31日に公布・施行された国立学校設置法により、旧制大学から新制大学へと移行しました。これに伴って、旧制第一高等学校と旧制東京高等学校を母体として新たに教養学部が設置され、初代の学部長には、やがて南原の後に総長となる矢内原忠雄が就任します。

東京大学の重要な教育理念として「教養」というキーワードが明確に浮上してくるのはこの頃からですが、夙(つと)に「普遍的教養」の重要性を強調していた南原総長の式辞には、こうした経緯がいち早く反映されています。

旧制の最後となる1949年4月12日の入学式では、これまでわが国の大学に欠けていたのは「教養」の問題であり、やがて新制大学ではこれを大いに取り入れるつもりであることが予告されていましたが、その3カ月後に挙行された新制最初の入学式(1949年7月7日)の式辞では、この姿勢がより厳密な言葉で述べられています。

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