会社辞め「フィンランドで寿司職人」34歳彼女の志 魚をさばいた経験なく、触るのも苦手だった

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思いがけず働き始めた会社だったが、社員の夢を応援してくれる雰囲気があった。「今思っても、この会社で学んだことが自分を変えてくれた気がしています」。

例えば「強みで、弱みを凌駕(りょうが)してもいいんだよ」、これは面談で上司からかけられた言葉だ。それまでのchikaさんは、興味を持ったらすぐ飛びつくものの、最後までやり切れないのが自分の弱さだと捉えていた。

しかし上司は、chikaさんの強みである「すぐやる」行動力を伸ばせば、弱みを克服できる、とアドバイスをくれた。「長距離走が苦手なら、短距離走をたくさん走って距離を伸ばしていけばいい」。それからは自分で短いスパンの期限を設定し、ゴールテープを切り続けることで達成感とともに成果を出せるようになった。

「フィンランドに移住してお店を持ちたい」

しばらくは仕事に夢中で、北欧のことは封印していた。しかし契約期間終了後の身の振り方を考えなければいけない。

そこで自分の興味や関心を改めて書き出していくと「北欧ブログ」「北欧カフェ」「北欧イベント」「北欧雑貨バイヤー」など出るものすべてが北欧関連。そうであれば「週末だけカフェ修行をする」「まずはブログを開設する」など、無理のない範囲で実行に移そうと考えた。

ここでも功を奏したのが、持ち前のすぐやる行動力と、とりあえず1カ月といった短距離走的な取り組み方。やってみると向き・不向きが見えてきて、目指す夢の方向性が定まっていった。

会社員時代は北欧好きの人たちと北欧の食材を持ち寄ってピクニックを楽しんでいた(写真:chikaさん提供)

中でもカフェ修行では、こだわりを持って店を営むオーナーから多くを学んだ。最初は国内で“まさに北欧”のようなカフェを開きたかったのだが、オーナーのように覚悟を持って取り組むなら、いっそフィンランドに移住してお店を持ちたい、と考えるようになった。

日本で暮らしていたときも北欧の食器やキャンドルを愛用し、生活の中で北欧を感じていた(写真:chikaさん提供)

そこで、まずはフィンランドで働く道を模索し、求人サイトを検索。だが、文系のキャリアでフィンランド語ができず、英語も中級程度だったchikaさんが就労ビザを得て働くのは難しそうだった。では日本人だから優遇される仕事はないだろうか。

探してみると、日本人寿司職人の求人が見つかった。しかもスキル重視で語学力は問わない、という求人もあり、手に職をつける強みを知る。最初は自分でも無謀だと思ったが、数カ月で卒業できる寿司職人養成コースの存在を知り、夢の道筋が見えた気がした。

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