「働くママになれる人」業種・職種で限られる現実 働くママの増加を全く喜べない「これだけの理由」
第1子が生まれたときに仕事のある女性が約6割に増加──。「働くママが大幅に増加」したことが先日来、話題になっている。
厚生労働省が5年おきに行う「人口動態職業・産業別統計の概況」(2020年度)が今年3月上旬に発表されると、妊娠や出産による女性の退職が大幅に減ったことが好意的に受け止められたのだ。第1子が生まれたときに仕事のある女性は、前回調査と比べ約17ポイントも増えた。
国立社会保障・人口問題研究所の調査では、理想の子ども数をもたない理由のトップは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(2021年、複数回答)。「働くママ」が増えることで、出産に関する経済的な心配は薄れるのだろうか。「働くママ」増の真相を追ってみると、取材からも、統計データからも、楽観的にはなれない現実が見えてきた。
妊娠を理由に退職勧奨を受けた、非正規雇用・販売職
「妊娠がわかって育児休業の相談をしようと思ったら、『うちの会社では一度辞めてもらうことになっている』と当たり前のように言われました。取り付く島もない状態でした」
都内の小売店で働いていたAさん(30代前半)は3年前、育児休業を取るどころか出産前に退職せざるをえなくなった。彼女の仕事は、高級食品の販売職。契約社員として3年働いていた。
Aさんは法律を調べて「非正規雇用でも育児休業が取れるはずだ」と交渉を試みたが、会社側は「妊婦に立ち仕事はつらいだろうし、何かあってお互いに嫌な思いをしないほうがいい。うちは、いったん辞めてもらうことにしています」の一点張りだった。非正社員の育休制度については後述するが、Aさんには育休を取る権利があり、妊娠を理由とした退職勧奨は違法だ。
そのうち仕事中にお腹が強く張ることが続くようになると、Aさん自身も流産や早産しないか心配になり、諦めるようにして退職した。Aさんは「出産後しばらくしてから、なんとか事務作業のパートを見つけました。2人目がほしくても正社員でないので、妊娠すればまた職を失うかもしれない。教育費のことを考えると、夫の収入だけでは2人目を望むのは難しそうです」とため息をつく。
このように妊娠をきっかけに退職せざるをえなくなるケースは、依然として少なくない。岸田文雄政権が掲げる「こども政策の強化」の3本柱には、児童手当や保育などのケア拡充のほかに「働き方改革」も含まれ、少子化と労働の問題は切り離せない。が、「働き方」というよりも、「雇用」や「仕事」そのものが問われるのではないだろうか。それを物語るデータがある。
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