「働くママになれる人」業種・職種で限られる現実 働くママの増加を全く喜べない「これだけの理由」

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厚生労働省が5年ごとに行う「人口動態職業・産業別統計」では、子どもが生まれたときの父母の就業状態を調べている。前述したように、2020年度に第1子が生まれたときに「母が有職の子」は62.9%となって「働くママ」は前回調査より17.1ポイントも上昇した。とはいえ同調査を詳しく見ていくと、「働くママ」の職業に大きな偏りがあることがわかる。

「母が有職」である場合を職業別に見ると、その割合が最も高いのが、システム設計者・医師・弁護士・教員など「専門・技術職」の22.8%だった。次いで高かったのが庶務・人事・企画・秘書など「事務職」(19.1%)。3番目は、介護職員・歯科助手・美容師・調理師など「サービス職」(9.5%)だった。

4番目以降は、「販売職」(5.3%)、「生産工程職」(2.1%)、「職業不詳」(2.1%)と低く、「保安職」「農林漁業職」「輸送・機械運転職」「建設・採掘職」「運送・清掃・包装等職」はいずれも1%に満たなかった

「働くママ」は実は、専門職、事務職で約4割も占めているのだ。女性労働者の占める割合が高いサービス職では、約1割にとどまっている。女性にとって仕事の幅は広がったとしても、妊娠してからも働き続けられる職業が事実上、限られている。

女性の雇用の安定度が結婚を左右している

日本では未婚の出産は例年2%ほどしかなく、ほとんどのケースで出産と結婚が切り離せないことから、次に雇用と婚姻率の関係について見てみたい。

「人口動態職業・産業別統計」から、同居開始前の夫妻の就業状況を見ると、妻が有職の場合の婚姻率が全体で81.5%と高い。女性の職種別で婚姻率が高いのが「専門・技術職」(26.3%)、「事務職」(22.1%)、「サービス職」(15.3%)という順だった。ちなみに、男性の有職の婚姻率は93.1%、婚姻率の高い職種の1位は女性と同じ「専門・技術職」(26.2%)となる。婚姻率の高い職業と、「働くママ」の率の高さはつながっている。

毎年発表される「人口動態統計」では、初婚夫婦が結婚生活に入る前の「世帯の主な仕事」別の婚姻率を調べている。結婚生活が始まる前に夫婦それぞれの世帯について、「農家」「自営業者」「常用勤労者Ⅰ」(1~99人の企業など)、「常用勤労者Ⅱ」(100人以上の企業、官公庁、役員)、「その他」(日々雇用など)、「無職」の組み合わせの婚姻率を知ることができる。

2021年の結果を見ると、婚姻率が最も高いのは夫婦共に「常用勤労者Ⅱ」で67.5%だった。ほかには、夫婦共に「常用勤労者Ⅰ」の53.0%という婚姻率の高さも注目できる。

そして、夫が「常用勤労者Ⅱ」でも妻が「無職」だと婚姻率は4.1%、妻が「その他」だと同5.4%と低く、夫が「無職」であっても妻が常用勤労者Ⅰ・Ⅱだと婚姻率は20%台と高い。つまり、女性の雇用の安定度が結婚を左右しているのだ。

これまで、男性が正社員か非正社員かで未婚率に大きな違いが出ることは指摘されてきたが、人口動態統計のデータでは、男性の勤め先だけでなく女性も共に安定しているほど、婚姻率が高い傾向がある。こうしたデータを総合していくと、「男女共に」「安定した勤め先」「安定した職業」であることが、結婚・出産に結びつきやすい環境だと言えそうだ。

次ページ依然として厳しい、女性を取り巻く雇用と出産・育児の環境
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