「働くママになれる人」業種・職種で限られる現実 働くママの増加を全く喜べない「これだけの理由」

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ところが、女性を取り巻く雇用と出産・育児の環境は、依然として厳しい。働く女性の非正規雇用は25~34歳で約3割でも、35~44歳になると約5割に増加する(総務省「労働力調査」2022年)。出産後に女性が非正規雇用に転じるケースが多いという背景がある。

1986年に男女雇用機会均等法が施行され、1991年のバブル崩壊、1997年の金融不安などの不況も後押しして、共働き世帯は増えた。1997年に専業主婦世帯と共働き世帯が完全に逆転し、2020年では共働き世帯は1173万世帯で専業主婦世帯の約2.5倍になっているが、妻の雇用の質は高いとは言えない状況だ。

労働法制の規制緩和と「働くママ」の2極化構造

総務省「労働力調査」を見ると、2020年の「専業主婦世帯」は462万世帯、「共働き世帯」は1173万世帯に上る。そのうち妻がフルタイム(週35時間以上)のケースは、2002年の439万世帯から2020年は466万世帯と横ばい状態。増えているのは妻がパート(週35時間未満)の世帯で、同498万世帯から617万世帯に増加している。

2022年9月に発表された「国民生活基礎調査」では、18歳未満の児童のいる世帯で母親が仕事をしている世帯が2021年で75.9%と、1986年の調査以来で過去最高となり注目を集めた。一方で、母親の仕事の状況は正社員が29.6%、非正社員が37.3%、その他が8.9%。仕事をしている母親の割合が増えているものの、非正社員の割合は2004年の26.2%から約10ポイント上昇しており、ここ数年は高止まりという状態だ。

1986年に男女雇用機会均等法が施行され、同年は労働者派遣法も施行された。1995年には旧日経連が「新時代の『日本的経営』」で雇用のポートフォリオを組むことを打ち出し、「育てる正社員」と「雇用の調整弁の非正社員」のすみ分けを提言。その後、労働法制は規制緩和され続け、非正規雇用は増えていった。その結果が、「安定した勤め先」「安定した職業」で「働くママ」か、妊娠で職を失い産後に非正規雇用で低賃金の業界にとどまる「働くママ」かの2極化構造をもたらしているのではないだろうか。少子化を加速させたのは女性の非正規雇用化も大きな一因ではないか。

総務省の「経済センサス」の新規把握事業者の男女別従業員数を見ると、どの産業で多く女性が働いているかがわかる。

2020年の調査結果では、「卸売業、小売業」で女性が占める割合は84.4%、「医療、福祉」で78.4%、「宿泊業、飲食サービス業」で76.2%と高い「卸売業、小売業」の女性の平均年収は約241万円、「医療、福祉」で約343万円、「宿泊業、飲食サービス業」で約183万円と低い(国税庁「民間給与実態統計調査」、2021年)。

当然、男女の平均年収に差がついていく。20~24歳の年収は男性が287万円、女性が249万円で大きな差がないが、25~29歳では男性が404万円になる一方で女性は328万円にとどまる。30~34歳では男性が472万円、女性が322万円と差がつき、35~39歳では男性が533万円、女性が321万円と、年齢が上がるごとに差が開く(国税庁「民間給与実態統計調査」、2021年)。

さらに、働き盛りであろう40代の男性の平均年収は1997年と比べ年間で約60万円も減っている。これでは、経済的な理由で理想の子ども数が現実のものとならなくても不思議ではない。

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