日韓関係の改善へ突き進んだ、尹錫悦大統領の意志 1998年「金大中・小渕宣言」当時の日韓関係を目指した

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今回の措置は両国が日韓首脳会談を開催することで経済安保分野での協力を強化し、さらには経済面でのグローバルな供給網を再編するという観点から、日韓の半導体産業での対立を解消するためだ。

李・産業通商資源相は「今後、日本から韓国へ3品目を輸出する場合、必要な書類の準備などが簡素化され、審査機関の短縮など手続き上の負担も大きく緩和されるなど、企業が抱える不確実性も解消される。また今回の合意は単純に輸出規制措置の解消にとどまらず、信頼構築のための第一歩となるものであり、日韓間の経済協力とグローバル供給網の安定化のための協調の主軸となるだろう」と述べた。

経済界は歓迎している。韓国貿易協会は「両国の貿易上の問題が解決されれば、半導体など先端産業での投資と技術協力が拡大され、両国経済はもちろん世界経済にも活力を与えるものと期待する」と明らかにした。

尹大統領「日韓関係改善は私の公約」

2022年の大統領政権で政権交代を果たした尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、慎重に慎重を重ねつつも2023年3月1日に行った演説を契機に、同月16日の日韓首脳会談へと急ピッチで関係改善を行うという軌跡を描いた。

尹大統領は2022年3月の大統領選挙期間中から、1965年の国交正常化以降、最悪とまで言われるほど悪化した文在寅(ムン・ジェイン)前政権時代の日韓関係を改善しようと主張してきた。

このような意志は、1998年に当時の金大中(キム・デジュン)大統領と小渕恵三首相の間で結ばれた「日韓共同宣言-21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」を発展的に継承しようという公約で示されていた。

金大中政権当時の前向きな日韓関係を引き継ぎ、首脳間シャトル外交の復活、元徴用工・元慰安婦問題の解決・賠償、韓国輸出規制の解除、GSOMIA再開など日韓関係をがんじがらめにしていた懸案を解決しようという考えだった。

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