【特集・中国の経済安全保障(第3回)】
昨年10月、アメリカのバイデン大統領は対中半導体輸出規制強化策を発表した。
決定したのは以下の2項目だ。
制裁は第三国経由や米国籍技術者も含まれ、先端チップ、スパコン技術が事実上中国に移転できないようになった。
フィナンシャル・タイムズ(FT)のエドワード・ルースは「歴史はバイデン氏のこの動きを米中対立が決定的になった瞬間として記録するだろう」([FT]米規制で台湾有事の恐れ 今や中国の政権交代も視野/日本経済新聞電子版2022年10月28日配信)と指摘し、追い込まれた中国による「台湾有事の恐れ」を懸念した。この規制強化策が中国の半導体産業にどう影響を与えるのか、中国の経済安全保障の視点から考えてみたい。
中国の半導体産業育成政策
中国は早くから半導体産業の育成を重視していたが、経済安全保障の視点から、製造技術の自立を明確にしたのは、習総書記が就任して間もなく、「国家集積回路産業発展推進綱要」を発表した2014年頃からだ。国を挙げての半導体の国産化、産業化を促す内容で、その背景には数億人規模でのの携帯電話の普及、ネット企業やIT産業の急成長による膨大な需要(世界需要の29%)があった一方、「自国産」チップのシェアは4%という厳しい状況があった。
万一、アメリカなど西側の輸出規制により、半導体の輸入が中断された場合、中国のエレクトロニクス産業のみならず、あらゆる産業に深刻な打撃を与えると懸念されていた。
半導体輸入額が原油を大幅に上回った2015年に「中国製造2025」が公表された。 半導体はその中心的位置づけとして、2020年までに14/16ナノチップを量産化して自給率、世界シェアをそれぞれ49%、43%に上げ、さらに2030年までに産業全体を国際先進水準に引き上げ、自給率、世界シェアをそれぞれ75%、46%にするという高い目標が掲げられた。
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