中国半導体産業の将来像
しかし、それにより中国の半導体産業全体が衰退すると見なすことは早計だ。なぜならば、今回の対中規制強化策はスパコンや高度なAIに使用されるGPUなど14/16ナノ以下の「先端半導体」が対象で、技術的に成熟している「汎用半導体」は対象にならないからだ。
「先端半導体」は1チップ当たりの値段は高いが、市場シェアは数%以下と言われ、市場ニーズが多いのは絶対的に「汎用半導体」だ。従い、今後「汎用半導体」やその関連装置への大々的な制裁の可能性は薄い、やれば膨大な中国需要が失われ、西側もすさまじい返り血を浴びることになるからだ。
中国は目下、「汎用チップ量産化」に舵を切り、先端半導体の開発は「調整再出発」を期している。14ナノチップの量産体制を目指したSMICは、28ナノの量産強化に入り、今やファウンドリー世界シェア5.3%(5位)に急上昇、国内二位の華虹も急速に同レベルの量産体制を作りつつある。
技術開発力が抜群のファーウェイは自力で半導体エコシステムへ重点投資を加速、数年後の成果に注目が集まる。創造力豊かなAIの企業家たちは豊富なビッグデータをベースに、汎用チップを駆使しながら、今なお中国社会に変化を起こし続けている。中国はこれからも侮れない。
臥薪嘗胆
対中半導体規制強化策の実施により「台湾有事」を連想したルースの判断は少し極端に思える。事態打開のため、中国が台湾侵攻することは考えにくい。例え侵攻が成功してもサプライチェーンが世界に広がる「先端半導体」を得ることはできないからだ。
それでは「『敵』に使わせないために侵攻しないか」との疑問は残る。それもコストが高すぎて合理的に考えれば、ないだろう。厳しい経済制裁により中国の「双循環経済」(国内外の経済を有機的に循環させる戦略)は崩壊するからだ。
中国は「制裁強化」に対しWTOに提訴したが、極端な反応は見せていない。筆者は、それを中国が「制裁」の厳しさを十分理解し、同時に今はどんなにあがいても「事態は変わらない」、臥薪嘗胆の時期と認識しているからだと見ている。
(徳地立人/アジア・パシフィック・イニシアティブ シニアフェロー)
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