元徴用工問題・日本が受け入れ可能な案が出た背景 関係国は解決案を評価するがさらなる争点も
日韓関係悪化の原因の1つとなっていた元徴用工問題で、韓国政府が解決案を提示した。これは2018年に韓国大法院(最高裁判所)が日本企業に対して賠償金を支払えとする判決に対し、韓国政府傘下の財団が日本側に代わって賠償金を支給するというのが主な内容だ。
これに対し、日本の岸田文雄首相も「歴代内閣の歴史認識を継承する」とし、「痛切なる反省と心からの謝罪」をという文言を込めた1998年の「日韓共同宣言」(21世紀に向けた新たなパートナーシップ)を継承する意思を明らかにし、日韓関係の正常化が一気に動き始めた。
しかし、被告となった日本企業からの賠償金支払いという内容がない。そのため、元徴用工はもちろん市民社会から「解決には不十分」という批判を避けられなくなった。元徴用工と市民団体は今回の決定を糾弾する会見を開き、ソウル市内で抗議集会を開くなど、政府案に強く反発している。
日本企業に請求しない「第三者弁済方式」
朴振(パク・チン)外相は政府案には、韓国内の意見をとりまとめ、また日本との協議の結果を基にしたと明らかにした。韓国・行政安全省傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が賠償金と支給遅延で生じた利子を支給し、現在進行中の元徴用工関連訴訟の原告が勝訴した場合でも判決に従った賠償金などを支給するとする。
朴外相はこのための財源について「民間からの自発的な寄付などによって用意し、今後財団の目的に沿った使用可能な財源を拡充する」と明らかにした。財源の拠出では、1965年の日韓請求権協定当時、日本からの資金の援用を受けたPOSCO(浦項製鉄)など16社が自発的な寄付が予定されている。
日本製鉄や三菱重工業など被告となった企業は財源支出に参加しないが、今回のような「第三者弁済方式」を行うことで韓国政府は裁判で被告となっている日本企業に請求しない方針だ。
一方で、両国の財界を代表する全国経済人連合会(全経連)と日本経済団体連合会(経団連)は、別途に「未来青年基金」(仮称)の設立などの案を準備する。
朴外相は「高齢となった被害者のために政府が責任を持って、過去の歴史が韓国国民に与えた痛みを積極的に癒やす」と説明した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は2023年3月6日、韓悳洙(ハン・ドクス)首相(国務総理)と面談し、「多くの困難に遭いながらも元徴用工問題の解決方法が発表できたことは、未来志向的な日韓関係へと進むための決断」と述べた。