韓国「日本は協力できるパートナー」は本心か 大統領演説で示した“異色"の対日メッセージの意味

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2023年3月1日、「三・一独立運動」記念式典で演説する韓国の尹錫悦大統領(写真・EPA=時事)

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が、日本の植民地支配に抵抗した1919年の「三・一独立運動」記念式典で演説した。就任初となるこの日の演説では、日本に対して「協力できるパートナー」と未来志向的なメッセージを込めた。これは、歴代大統領がこの日の記念式典で語った内容とは大きく異なる内容となった。

朴槿恵(パク・クネ)大統領が就任後初めて行った「三・一独立運動」記念演説では、「加害者と被害者は1000年の歴史が流れても変わることはできない」と述べて日本の戦争犯罪問題を直視するなど、歴代大統領は保守・進歩(革新)どちらの政治志向の大統領であっても日本の謝罪と責任を問う内容を述べてきた。とくに文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は、元慰安婦問題など戦争犯罪はもちろん、独島(日本名竹島)問題まで言及して最も強硬な内容を述べた。

歴史、領土問題にも言及なし

尹大統領は演説で、日本を「軍国主義的侵略者」としながらも「三・一独立運動から104年経ち、今の日本は普遍的価値を共有する協力パートナー」になったと述べた。2022年に就任した後、初めてとなる8月15日「光復節」(植民地支配が終わったことを記念する日)での演説では、日本を「世界市民の自由を脅かす挑戦に立ち向かい、共に力を合わせて進むべき隣国」と明らかにし、その後も 日本は協力すべき対象であることをアピールしてきた。

この日の演説で尹大統領が「軍国主義的侵略者」と原稿で書いたのは、「現在は日本がわれわれと価値を共有できる国家に変化した」ということを引き立てるために、あえて対照的な表現を入れたとみられている。

日本との協力と未来を強調する一方で、「過去の歴史に対する謝罪」を要求したり植民地時代の元徴用工被害者問題など日韓関係の懸案には、今回の演説では触れられなかった。これは現在、日韓の外交当局間で交渉が進められており、また2023年上半期中に日韓首脳会談の開催も視野に入れた議論が行われているためだ。

そのため、日本政府を刺激しないようにしたものではないかとの観測が出ている。2023年3月下旬、あるいは同年5月の広島での主要7カ国(G7)首脳会議をメドに、尹大統領が初訪日する可能性も一部から出ている。

大統領室高官は「日韓関係での懸案に対し具体的に言及したり、韓国政府の考えを大統領が直接明らかにしたりすれば、交渉対象である日本政府に有利に働く」と言う。2022年8月15日の演説では、1998年に当時の金大中(キム・デジュン)大統領と小渕恵三首相によって発表された「日韓共同宣言」(21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ)に触れたが、今回はこれには言及しなかった。

北朝鮮問題については「核は深刻な脅威」と簡単に述べたが、一方で「自由」「未来」などの言葉を込めたメッセージが多く触れられた。

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