元徴用工問題のボールは韓国から日本に移った 外交が韓国司法から主導権を奪い返せるか

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元徴用工問題の解決に向けた韓国政府の取り組みを批判する原告側支援者や国会議員ら
ソウルの国会前で1月12日、原告側の支援者らが抗議した(写真・時事通信)

元徴用工問題(日本統治下で動員された労働者が日本企業に対する訴訟を起こした問題)について、韓国政府が解決に向けて積極的な動きを見せている。

韓国政府の解決案はまず、損害賠償請求を認める判決が確定した元徴用工に対しては、日本企業に代わって韓国の財団が賠償金を支払う。さらに係争中の元徴用工に対しても同じ方法をとって、この問題を一気に解決しようという内容だ。

この解決策が実現すれば、日韓間で最大の懸念となっている日本企業の資産の現金化を回避できるだけでなく、李明博(イ・ミョンバク)大統領の時から続く日韓関係の「停滞の10年」を終わらせることも期待できるだろう。

日本企業に代わって原告に損害賠償金を支払うとされているのは韓国の「日帝強制動員被害者支援財団」だ。この財団は日本による植民地支配時代、軍人や労働者、慰安婦として動員された人たちの福祉支援、追悼、さらに強制動員被害に関する文化・学術研究、調査などを目的に2014年に設立された。

韓国政府案ではこの財団に韓国企業が寄付し、それを財源として財団が元徴用工に賠償金などを払う。既に韓国最大の製鉄会社ポスコが100億ウォン(約10億円)の拠出を約束し、すでに60億ウォンを寄付している。

日本の資金で発展した韓国企業が賠償金を寄付

1965年、日韓請求権協定が結ばれ日韓の国交が正常化した際、日本政府は韓国に対し合計5億ドルの経済協力資金を支払った。当時の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領はこの資金も活用して「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を実現した。

ポスコの前身である浦項総合製鉄はこうした朴大統領の政策の下、日本からの資金を使って作られた企業で韓国最大の製鉄会社となっている。ポスコのほかにも日本からの経済協力資金を使った大手企業が合わせて10社ほどあり、財団はこれらの企業に寄付を要請し、元徴用工に渡すお金の原資に充てるつもりだ。

また財団は政府の動きに合わせて1月、定款に新たに「国外強制動員被害者と遺族に対する被害補償と弁済」という条文を追加し、元徴用工への賠償金支払いを可能にする措置をとっている。解決案実現に向けて着々と動いているのだ。

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