総合商社が「国内回帰」を鮮明にする真の事情 資源バブルの先に勝ち残る「5大商社」はどこか

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それから数年が経ち、米中対立の激化やロシアによるウクライナ侵攻などで海外の大型投資案件の事業リスクは確実に上昇している。

三井物産と三菱商事が出資するロシアのLNG開発プロジェクト「サハリン2」では、事実上の運営主体である英シェルが2022年2月のウクライナ侵攻後に撤退。プーチン大統領が署名した大統領令によりロシア法人に事業が移管され、事業をいつまで継続できるか依然不透明な状況にある。

ミャンマーの国営通信事業に参画する住友商事は、2021年のクーデターを受けて国軍の通信監視手段や資金源になっているとの批判にさらされた。丸紅が2013年に買収したアメリカ穀物大手のガビロンは、業績不振に加え米中貿易摩擦のあおりも受け、2022年10月にカナダの企業へ売却された。

地政学や為替のリスクがない日本

これまで商社が海外で収益を上げる「三種の神器」といえば、新興国、資源、インフラだった。が、資源事業は脱炭素の潮流にあらがえず、新興国で展開していた石炭火力発電や石炭権益は近年、相次ぎ撤退に追いやられた。安定的に稼げるインフラ事業も足元で円安やインフレが進行する中、商社は海外への投資を手控えている。

一方、地政学や為替のリスクがない日本は「相対的に割安感もあり、消去法的に商社の投資資金が向かいやすい状況だ」(野村証券の成田氏)。

国内事業で一歩先を行くのは、伊藤忠商事だ。ファミリーマートを中心にマーケットインの発想で国内市場を深耕しており、他の大手総合商社よりも全体の純利益に占める内需関連比率が高い。

伊藤忠の岡藤正広会長は「『灯台下暗し』ではないが、こんなビジネスチャンスがあったのか、と。日本のいいところは法制度がしっかりしているところで、ビジネスはやりやすい」と言う。

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