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住友商事「量子技術でゲームチェンジャーになる」 住友の事業精神「企画の遠大性」を貫けるか

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各事業部門でバランスよく稼いできた住友商事だが、純利益では4番手が定着している。この定位置を脱却できるのか兵頭誠之社長に聞いた。

住友商事の兵頭社長
「エッジの利いたところに経営資源を投入していく」と語る住友商事の兵頭社長(撮影:今井康一)

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ケーブルテレビなどのメディア・デジタル事業や油井管を軸とする鋼管事業に強みを持つ住友商事。今2023年3月期業績も通期純利益5500億円(前期比18.6%増)計画と、過去最高純利益を更新する見通しだ。
これまでは各事業部門で収益に偏りがない、バランスのよい経営を継続してきたが、この先の産業構造の変化をどう予測し、どうビジネスにむすびつけていくのか。そして、5大総合商社の中で「純利益4番手」の定位置を脱却することができるのか。2023年度に社長になって6年目を迎える、住友商事の兵頭誠之社長に聞いた。

 

――今2023年3月期は資源高もあって好決算の見込みです。

鉱物資源だけではなくて、エネルギー価格もウクライナ問題を起点に大きな価格変動が起きている。こういったマーケットの動きについては、影響としては全体的にプラス面が大きいが、(国内電力や海外通信など)マイナスを受けている事業もある。

ただ、今期のような外来要因が発生したときも、企業を成長させるために、グループ全体で構造改革に取り組んできた。それが成果(好決算)につながっていると考える。

――好環境はいつまで続くと見ていますか?

外部環境を分析すると短期的に大きく変動するものもあれば、長期にトレンドとして変動するものもある。その要素をわけて考えないといけない。

欧州の天然ガスの価格は今期については、やはり異常値だった。そして、金属部門では、基本的な産業素材のひとつである鉄に世界中で底堅い需要がある。北米、アジアを中心に経済活動、生産活動が戻ってきているので、この影響が大きい。短期的には、こういった動きが、業績を牽引する要素になっている。

長期トレンドではサステイナビリティ経営が大事

一方、長期トレンドで考えた場合はどうか。例えば、当社には油井管(ゆせいかん)というビジネスがあるが、この先10年、20年単位で見た場合の油井管の需要トレンドがどうなるか。これまでは地球がCO2を無限に吸収して、自然の力で再生して(光合成)、酸素と水素に分離してくれる、このサイクルを無限に繰り返してくれる、という前提のもとで人間は営んできた。ところが、(自然破壊を繰り返すと)それが続かないことに(人類は)気がついた。

この先は、CO2を滞留させないで、還流(かんりゅう)、そしてリサイクルさせることが人工的に実行できれば、温暖化問題は解決できるかもしれない。となると、油井管についてはいまは井戸を掘削するための用途で使われているが、CO2の回収サイクルが始まると、その際に油井管のような高級鋼材が必要になってくる可能性がある。

次ページ中計の方向性、そして「次の一手」は?
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