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三菱商事の「大規模洋上風力」は本当に稼げるのか ハイリスク、ローリターンといわれる洋上風力

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三菱商事が秋田や千葉で安い売電価格を提示して落札した洋上風力。昨今の資材価格高も加わり、収益性の問題が懸念される。地域再生につなげる事業に育成できるかも問われる。

エネコがオランダで手がける洋上風力発電
三菱商事の子会社エネコがオランダで手がける洋上風力発電。風力が問題視される日本でも収益をあげられるか(写真:三菱商事)

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「われわれは洋上風力できちっと収益をあげていく」。三菱商事の中西勝也社長は2月下旬に実施した東洋経済のインタビューにおいて、そう言い切った。

三菱商事を中心とする企業連合は2021年12月、国の洋上風力発電事業の公募で秋田県、千葉県の3海域の事業を総取りした。落札した3事業では、GE製の風車を合計134基建設し、合計174.2万kWの容量となる。それぞれの海域を30年(売電期間は20年)占用する、まさに巨大プロジェクトだ。

施工は鹿島とオランダのバンオードによるジョイントベンチャーが担う。総事業費は「1兆円に近いほうの数千億円」(電力業界関係者)とも言われる。

「今年半ばから詳細設計に入る。洋上風力を安いコストで仕上げ、競争力のある使いやすい電気をつくりたい」。事業の実行部隊となる三菱商事洋上風力の田中俊一社長は表情を引き締める。2021年の入札で三菱商事が示した売電価格は、入札上限の29円(円/kWh)を大きく下回る11.99~16.49円。20円台で応札した事業連合が多い中、圧倒的な安値が「事業独占」の決め手となった。

入札第2ラウンドは事実上の撤退

「価格破壊」「赤字入札ではないか」。ライバル企業の関係者は異口同音にこう揶揄する。だが、三菱商事の中西社長は「採算を取れる値段を算出し、この値段で選ばれるなら応札しようと打って出た。3海域が取れたのは結果にすぎない」と意に介さない。

安値のカラクリは「企業秘密」として明かさないが、風車のメーカー選びから建設の工法、稼働率や風況をどう見るかといった、「(他社とは)ひと味もふた味も違う」(中西社長)という三菱商事独自のノウハウを結集して、売電価格を弾きだしたようだ。

安値価格を打ち出せた要因としては、オランダの電力子会社「エネコ」の練度の高いノウハウを取り入れたことも大きい。

「われわれはヨーロッパの成熟度を他社より先に持ち込んで、差をつけることができた。たとえば、海の状態が悪いと工事は遅れる。プロジェクトマネージメントが難しいが、そこにエネコのノウハウを入れて、マネージメントの手法を確立している」と、三菱商事洋上風力の田中社長は語る。

第2ラウンドで入札が見込まれる企業
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