日本の洋上風力、案件規模拡大と加速化が急務 最大手オーステッド幹部が日本の課題を指摘

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ウクライナ問題を機に深刻になる一方のエネルギー危機。デンマークの洋上風力大手の幹部は「日本は洋上風力導入のコミットメント明確化とプロジェクトの規模拡大を図るべき」と訴える。

オランダのボルッセレⅠ&Ⅱ洋上風力発電所(オーステッド提供)

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ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、世界規模でエネルギー危機が深刻化している。
ヨーロッパの国々はこの危機をどう乗り越えようとしているのか。また、日本の電力市場をどう見ているのか。洋上風力発電事業のパイオニアで世界最大手であるデンマーク・オーステッド社のマーティン・ノイベルト副グループ最高責任者(CEO)にインタビューした。

天然ガスのロシア依存度を引き下げる

――ヨーロッパはエネルギー危機をどのように乗り越えようとしているのでしょうか。

ヨーロッパ連合(EU)はエネルギー危機に対処すべく、3月に「リパワーEU」と称する新たなエネルギー政策を発表した。天然ガスのロシア依存度の抜本的な引き下げと、再生可能エネルギーの拡大が政策の2本柱だ。

マーティン・ノイベルト/1973年生まれ。アーサー・アンダーセン、アーンスト&ヤング、ベインキャピタルを経て2008年にオーステッド入社。2021年2月から現職(撮影:梅谷秀司)

リパワーEUでは、2022年末までにEU諸国のロシアからの化石燃料輸入量の66%を削減する目標が新たに掲げられた。石炭と石油の輸入を禁止する方針が採択されるとともに、天然ガスについても代替調達先を確保する。

エネルギー効率化(省エネルギー)の取り組みも強化する。1日にして成るものではないが、リパワーEUでは脱ロシア依存の柱として再エネシフトが前面に打ち出されている。

具体的には、2030年までの再生可能エネルギーの導入目標を、従来の電力設備容量の40%(1067ギガワット)から45%(1236ギガワット)に引き上げた。

EUは再生可能エネルギー由来の電力を用いて製造する「再生可能水素」の増産方針も掲げた。EU域内で2030年までに年間1000万トンの生産体制を構築するとともに、域外から同量を輸入できるようにする。

水素は製造業など熱分野の脱炭素化に不可欠だ。EUは再生可能水素の導入で世界をリードしようとしている。再エネ電力と再生可能水素は、2050年カーボンニュートラルを実現するうえでの両輪だ。

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