石炭火力発電所の建設は是か非か、迫る審判の日 訴訟の焦点は「環境アセス簡略化」の正当性
気候変動(地球温暖化)の原因物質である二酸化炭素(CO2)を大量に排出する石炭火力発電所の稼働をめぐり、批判が強まっている。そうした中、1月27日に石炭火力発電所の建設に対する判決が東京地方裁判所で予定されている。
国内最大手の火力発電企業JERAは、1960年代に操業を開始した石油を燃料とする横須賀火力発電所を廃止し、新たに石炭火力発電所に建て替える「リプレース」事業を推進。2023年6月に石炭火力の新1号機(出力65万キロワット)の営業運転を開始する予定だ(同2号機は2024年2月に営業運転開始予定)。
だが、JERAによる環境アセスメントの内容が不十分だとして経済産業省による環境アセスの「確定通知」(行政処分)の取り消しを求める行政訴訟が地域住民によって提起され、その第一審判決が1月27日に東京地裁で予定されている。世界各地で気候変動問題や石炭火力発電をめぐる訴訟が相次ぐ中、日本でも政策の是非を問う訴訟に審判が下される。
環境アセス簡略化に合理性はあるのか?
1月16日の神奈川県横須賀市久里浜地区。雨模様の天気が続くこの日、高台にある公園から見渡すと、石炭を燃料とする火力発電所が白い煙を上げて試運転を続けていた。出力を上げ下げしても設備に問題がないことを確認するなど、6月の営業運転開始に向けてのJERAによる準備作業は大詰めを迎えている。
この石炭火力発電所の計画に強い疑問を持っているのが、行政訴訟の原告団長を務める鈴木陸郎さん(80歳)だ。長年住んできた横須賀に新たに石炭火力発電所が建設される計画を知ったのは2016年。甥をぜんそくで亡くして1~2カ月後だったことから、「横須賀の空気が再び汚されることになるのではないか」と危機感を抱いたことが訴訟に踏み切るきっかけになったという。
鈴木さんが「特に納得できない」と感じているのが、JERAによる環境アセスの手続きの大幅な簡略化だ。
火力発電所がリプレース案件である場合、経済産業省が定めた「合理化ガイドライン」が適用されることで、通常の新設案件であれば必要とされる大気汚染や温排水の影響、稀少動物の生息への影響などについて、細かく測定地点を定めて実際のデータを取得して影響を評価する作業が必要ないとされていたのだ。JERAは同ガイドラインに着目し、環境アセスの手続きを簡略化した。
だが、このやり方には大きな問題があった。
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