東電が原発事故で「初の謝罪」に追い込まれた事情 従来の方針を修正、6月17日に注目の最高裁判決
初めての謝罪は東京電力ホールディングスの姿勢の転換につながるのか――。
東京電力福島第一原発事故で避難を強いられた福島県内の住民が東電に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁が東電の賠償責任を確定する決定をしたことを受け、経営幹部が6月5日、原告の住民に初めて謝罪した。
同社の高原一嘉・常務執行役福島復興本社代表は同日、福島県双葉町で小早川智明社長名の謝罪文を原告らに手渡し、「心から謝罪いたします」などとその内容を代読した。
「人生を狂わせた」と表現した東電
東電はこれまで事あるごとに「ご心配とご迷惑をおかけしました」などと述べてきたが、過失に基づく法的責任を認めたと受け止められることを恐れ、一切の謝罪を拒み続けてきた。
東電はこれまで、過失のあるなしにかかわらず一定の賠償額を支払ってきた。しかし、過失責任を認めた場合、国の原子力損害賠償法(原賠法)の無過失責任原則に基づく、従来の賠償額では不十分となり、上積みの必要性が明確になるためだ。
東電の謝罪文では「皆様の人生を狂わせ、心身ともに取り返しのつかない被害を及ぼすなど(中略)心から謝罪します」などと、これまでにない踏み込んだ表現も見られる。原告団事務局長の金井直子さんは「(10年近くにわたった訴訟の)一つの区切りになった」と東電の謝罪を肯定的に受け止めた。
一方、原告団長の早川篤雄さんは「私個人の思いとしては非常に複雑で、一言で表すことはできない。私の期待するところには至らなかった」と述べた。仙台高裁の控訴審判決文は、早川さんが代表を務める地元市民団体の度重なる要請を無視して津波対策をおろそかにしてきたことに言及したうえで、東電の不作為を「痛恨のきわみ」と表現するなど、東電の姿勢を厳しく批判している。
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