エジプで開催された気候変動問題をめぐる国際交渉COP27では、「損失と損害」をめぐる新基金設立で合意されるなど、気候変動による被害への対応策について多くの注目が集まった。一方で地球温暖化に歯止めをかけるための温室効果ガス排出抑制では大きな成果はなかった。だが、脱炭素化への潮流が弱まったと考えるのは早計だ。
「残念ながら(二酸化炭素(CO₂)削減対策が講じられていない)すべての化石燃料の段階的廃止を合意文書に盛り込むことはかなわなかった。80カ国も賛同していたにもかかわらず」
エジプトのシャルム・エル・シェイクで11月6日から18日にかけて開催された国連の気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)の閉幕時に、ヨーロッパ委員会のティメルマンス上級副委員長は無念さを吐露した。
COP27を前に発表された「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第6次評価報告書では、各国が公約したCO₂など温室効果ガス削減目標を積み上げても、地球の平均気温は産業革命以前と比べて2度を超えて上昇するとの予測が示された。そうなると干ばつや集中豪雨などの頻度が著しく増大し、海面上昇など現代文明を脅かす事態に歯止めがかからなくなる。
こうした「気候危機」と呼ばれる大惨事を防ぐには平均気温の上昇を1.5度に抑えることが喫緊の課題であり、そのためには2025年までに世界の温室効果ガス排出総量を減少に転じさせる必要があることが明示された。そして、その実現には石炭のみならず、石油や天然ガスなどの化石燃料インフラを現状の規模から削減することが必要だとされた。
しかしCOP27では産油・産ガス国である一方、気候変動の影響を受けやすいアフリカ地域を代表するエジプトが議長国を務めたこともあって、「ロス&ダメージ」(損失と損害)と呼ばれる、すでに発生した気候災害への対応が最大の焦点となった。そのあおりを受けて、CO₂削減強化の議論は後回しにされた。
「化石燃料の段階的廃止・削減」も焦点に
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