半導体チップの回路設計は自社で行うが、製造は外部に委託する「ファブレス」で、グローバルな存在感を示す企業が日本にある。最先端品を手がけるソシオネクストだ。
自動車のフロントガラス上に走行中の速度や道路の形状などを映し出す「ヘッドアップディスプレイ」と呼ばれる技術。あるドイツ車で採用されているヘッドアップディスプレイは、日本企業の半導体によって支えられている。
その企業は、ロジック(演算用)半導体を設計・販売するソシオネクストだ。パナソニックと富士通のロジック半導体部門が統合、2015年に発足した。半導体は回路の線幅を細く作れば作るほど性能が上がる。同社が手がけるのは、5ナノメートルや7ナノメートル(ナノは10億分の1)といった最先端品となる。
ソシオネクストは、顧客が最終製品をどう作りたいかという「上流工程」から携わり、顧客の要望を半導体の設計に落とし込む。生産は台湾TSMCなどのファウンドリー(半導体製造受託企業)に委託する。いわゆるファブレス企業だ。
「日本の半導体産業において、最先端品を設計できる企業はほかにない」。イギリスの調査会社Omdiaで半導体に詳しい杉山和弘コンサルティングディレクターは、ソシオネクストをそう評価する。現状、最先端品においてグローバルでの存在感を発揮している唯一の日本勢と言える。
社外取締役からの大抜擢
ソシオネクストのもう1つの目を引く点は、会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)である肥塚雅博氏の経歴。肥塚氏は特許庁長官などを歴任した通商産業省(現・経済産業省)の元官僚だ。公職を離れた後、富士通で顧問や専務などを務め、ソシオネクスト設立時には日本政策投資銀行から出資を仰ぐなど奔走した。
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