日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生 オンセミ新潟工場を投資ファンドが買収

✎ 1〜 ✎ 17 ✎ 18 ✎ 19 ✎ 最新
拡大
縮小

新潟県で、パワー半導体の勢力図に一石を投じる動きが始まった。

JSファンダリの正面玄関
オン・セミコンダクターの新潟工場はマーキュリアホールディングス傘下で再出発した(写真:JSファンダリ)

特集「半導体 次なる絶頂」の他の記事を読む

新潟県長岡駅から車で雪道を走ること約30分。信濃川のほとりに巨大な工場が見えてくる。その広さは16万平方メートル。東京ドーム3.5個分にもなる。

「まずはこちらに着替えてください」。そう言って手渡されたのは、全身を覆う防塵服だ。外部のほこりを工場内に持ち込まないように、徹底した管理をしていることがよくわかる。

ほこりを落とすための風を浴びながら工場内に入ると、真っ白な装束に全身を包んだ作業員たちが、ズラリと並べられた装置の間を行き来している。装置の中には、何やら丸い形をした板があり、ある装置は板に熱を加え、ある装置は板に薬品を塗っていることがわかる。

この丸い板の正体は半導体の材料となるシリコンウエハ。工場を運営しているのは、半導体を受託製造するファウンドリーの新会社「JSファンダリ」だ。

この工場はかつて、アメリカの半導体大手オン・セミコンダクター(オンセミ)の新潟工場だった。固定費削減の一環で売却されたこの工場を日本政策投資銀行や伊藤忠商事が出資するマーキュリアホールディングス(HD)の中核子会社などが2022年12月に買収。JSファンダリを立ち上げて、ファウンドリービジネスをスタートした。

国や新潟県もこの取り組みを後押し。補助金57億円を交付する見通しだ。

幻と消えた「合従軍」構想

次ページ「独立系」だからこそできること
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
半導体 次なる絶頂
市況回復を見据えて「10年で10兆円を投資」
TSMCの魏哲家CEOの発言は世界中の注目の的だ
自動車向、家電向けでの不足はしばらく続く
偽物や不良品をつかまされるリスクが大きい
回路設計者の人材がますます必要になっていく
普段はまったく意識しないものの、意外と身近な存在
ニュースでも頻出する用語をわかりやすく解説
2030年までに売り上げを2倍強にする方針も
主戦場のメモリーは投資競争が熾烈を極める
覇権を握るカギは「大口径化」と「SiC」にある
新技術「3次元実装」は世界のTSMCも日本を頼る
TSMC熊本誘致は半導体産業の復活を図る第一手
自民党「半導体議連」の甘利明会長が大胆提言
無策なら日本の半導体シェアは「ゼロ」になる?
経済産業省主導の国策、待ち受ける「茨の道」
TSMCが日本に第2工場検討、「熱狂の地」はどこに
1カ所目・熊本への経済効果は10年で4.3兆円
国策半導体ラピダスにIBM幹部が持ちかけた提案
脱クルマ依存がカギ、株式上場も視野に入れる
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
オンセミ新潟工場を投資ファンドが買収
半導体「国策しくじり物語」から学ぶ4つの教訓
国家プロジェクトが林立した2000年代の失敗
元通産官僚が率いる「半導体ファブレス」の勝算
5ナノなど最先端品で気を吐く唯一の日本勢
実用化に向けて準備が進む「ナノインプリント」
市況の山谷にあわせた人員調整から脱却する
政府主導の株式非公開化ではないと断言
リョーサンとの統合を決めた中村社長に聞く
菱洋エレクトロとの統合を決めた稲葉社長
市況の波にのまれず「メンテナンス技術」を継承
STマイクロ、インフィニオン、ウルフの各戦略
インフィニオンの車載半導体トップに直撃
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内