ソニーの新社長「財務のプロ」が問われる独自色 中計を1年残したタイミングでのトップ交代
「成長にこだわる」――。ソニーグループの社長交代会見で、4月から社長に就く十時(ととき)裕樹・副社長兼CFO(最高財務責任者)は力強くそう宣言した。普段の十時氏は理路整然とした語り口で感情をほとんど出さないが、この日は笑顔も見せた。
ソニーのトップ交代は5年ぶりとなる。十時氏は社長COO(最高執行責任者)兼CFOに昇格。現任の吉田憲一郎会長兼社長CEO(最高経営責任者)は、会長CEOとして経営の中枢にとどまる。
この5年間の吉田体制では、ホンダと提携してEV(電気自動車)事業に参入。ゲームや音楽などエンタメ系の事業の強化も進んだ。業績はおおむね右肩上がりで拡大。2022年度は売上高11.5兆円と2017年度比で3割増、営業利益は1兆1800億円と同6割増の見込みとなっている。
社長交代でも吉田・十時の体制は大きく変わらず
十時氏と吉田氏は、いわば「ニコイチ」のような存在だ。十時氏は2005年に移籍したネット子会社のソネットで、吉田氏とともに経営を指揮。2013年に吉田氏がソニー本体の執行役にと請われた際は、一緒に本体へ復帰した。指名委員会に次期社長として十時氏を推薦したのも吉田氏だ。
会見で吉田氏は、「外部環境の変化が激しくなっている」ことを社長交代の理由に挙げた。ただ、この説明はうわべにすぎない感がある。吉田氏が会長CEO職にとどまるため、吉田・十時両氏による2トップ体制はさほど大きく変わらないからだ。ある若手社員も「今までと何が変わるのか」と疑問視する。
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