「EVダメ」で世界に遅れる日本は本当に大丈夫か 元日産COO・志賀俊之氏が危機を訴える理由

日産の「リーフ」はEV化の黎明期である2010年に発売されたフロントランナーだった(写真:PIXTA)
2022年に世界の電気自動車(EV)シフトは着実に進展した。2023年の新車販売に占めるEV比率は、中国が約2割、ヨーロッパは約14%、アメリカでも約5%へと高まった。一方、日本は前年から3倍に伸びたものの2%弱だった。EVシフトに対する日本の遅れに危機感を募らせるのが官製ファンドのINCJ(旧産業革新機構)会長CEOの志賀俊之氏(元日産自動車副会長)だ。
ネガティブなイメージ払拭できず
――EV化で日本は世界に先駆けたはずでした。
日本では三菱自動車が2009年に「アイ・ミーブ」を、日産自動車が2010年に「リーフ」を発売した。同じような時期にアメリカではテスラが出てきた(2008年に「ロードスター」、2012年に「モデルS(初代)」)。テスラは今や世界トップのEVメーカーになった。

志賀俊之(しが・としゆき)/1953年生まれ。1976年日産自動車入社、1999年企画室長兼アライアンス推進室長、2000年常務執行役員、2005年から2013年まで最高執行責任者を務める。2015年から産業革新機構(現INCJ)会長(記者撮影)
日産はEV化の初期に先頭にいてEV関連で約4000億円もの投資をしたが、大きな差を付けられてしまった。なぜダメだったのかとよく聞かれる。
国からの補助金をいただいて国内に6000基か7000基の急速充電器を作るなど初期段階で日本は頑張ったが、EVはブームにならなかった。当初は充電器が少ない、EVの航続距離が少ない、補助金があっても車として高く、下取り価格も悪い。走行距離が長いユーザーの場合、電池も劣化する。そういったネガティブなイメージが強く大衆化しなかった。
今もネガティブなイメージを払拭してEV化を進めていこうという強い先導役が日本にはいない。メーカー側のコミュニケーションの問題もあれば、欧米と比べて充電インフラへの予算も少ないといった国の政策の問題もある。
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