
はしもと・えいじ/1955年生まれ。一橋大学商学部商学科、ハーバード大ケネディ公共政策大学院卒業。1979年新日本製鐵(現・日本製鉄)入社。2003年海外営業部部長、2009年執行役員、2013年常務執行役員、2016年副社長、2019年4月から現職(撮影:梅谷秀司)
鉄の復権ーー。国内トップの鉄鋼メーカー、日本製鉄の業績が回復している。2021年度に続き、2022年度も最高益更新を見込んでいる。
事業環境が追い風だったわけではない。世界経済の低迷で鉄鋼需要は落ち込み、海外の市況は下落している。日本製鉄も粗鋼生産は前年比マイナスだが、強気の値上げによって一定のマージンを確保。海外事業やグループ会社の業績も改善するなど、収益体質が向上しているからだ。
2023年も好調は続くのか、橋本英二社長に聞いた(2022年12月22日の社長会見を基に東洋経済が構成)。脱炭素への道筋については「脱炭素を真剣に考えるべき」日本製鉄社長の直言に。
量より採算は社長の責任
――2023年の鉄鋼生産の見通しは。
日本の粗鋼生産量は2022年度が約9000万トンとなる見通しだ。2023年度は国内需要が自動車生産の改善で微増だが、海外需要は中国がどこまで戻るかはまだわからない。今日時点では2023年度の粗鋼生産量は9000万トンから9500万トンの間だと思う。
――世界的に鉄鋼需要が低迷する中でも2022年度は2期連続の最高益を予想しています。要因の1つとして製品を適正な価格で販売できるようになったことがあります。
長い間、ひも付き(大口顧客との相対取引)の価格是正が課題だった。ひも付きは市況品とは違う品質の製品を、安定的に供給しているのでマージンがないと事業をやっていけない。そのこと自体は顧客も理解している。だが、市況が安かったり、安く出している競合がいると、営業は量を優先して価格が二の次にならざるを得ない。これは経営の問題であり、社長の問題だ。そこで余計な負担を営業にかけないように過剰能力を落とした。高炉4基を休止して生産能力を約2割削った。
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