日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情 インドで合弁会社が1兆円の投資に踏み切る

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カーボンニュートラルの要請が強まるタイミングで、なぜ二酸化炭素の排出が多い「高炉」を新設するのか。

日本製鉄のインド拠点
インド西部のハジラにあるアルセロール ミタル ニッポンスチールインディアの製鉄所(写真:日本製鉄)

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国内拠点のリストラを進めてきた日本製鉄が、今度は「量の拡大」に向けて海外でアクセルを踏み込み始めた。

9月28日、日本製鉄は4割を出資するインド合弁会社「アルセロール ミタル ニッポンスチールインディア(AMNSI)」が約1兆円の投資に踏み切ると発表した。

AMNSIは2019年に欧州アルセロール・ミタル(AM)と共同で買収したインド5位の鉄鋼メーカーだ。7300億円を投じて高炉2基を含む各種生産設備を増強するほか、3400億円を投じて港湾や電力などのインフラを買収する。総投資額1兆0700億円は、AMNSIが自己資金と借入金でまかなう。借入金額は未定だが、必要に応じて、AMと日本製鉄が出資比率に従い債務保証を行う予定。

2基目の高炉が稼働する2026年にはAMNSIの粗鋼生産能力(年間)は現在の900万トンから1500万トンに拡大する。港湾などはAMNSIの製鉄事業に不可欠なインフラばかりだが、買収時には対象外だった。自社保有とすることでこれまで払ってきた使用料が不要になる上、今後の能力拡張にも対応しやすくなる。

インドは鉄鋼需要が飛躍的に伸びる

AMNSIを通じてインドで積極投資するのは、成長が確実視されている市場であるからだ。「インドは人口構成が若く、発展が期待でき、人口もさらに伸びていく。鋼材需要も飛躍的に伸びる。能力を拡張して成長市場を捕捉する」と森高弘副社長は9月28日の会見で力を込めた。

2021年のインド国内の鋼材使用量は1億0610万トン。9億5200万トン中国に続く世界2位で、5750万トンの日本を大きく上回る。他方、国民1人当たりでは76キログラムと、456キログラムの日本や、666キログラムの中国に比べるとまだまだ少ない。

経済成長に伴って1人当たり使用量は2030年に倍増すると見込まれている。加えて、人口は増加が続いており、2023年には中国を抜いて世界一となる見通し。

インドの粗鋼生産量は1億1820万トン。輸入規制もあって国内でほぼ完結している。9633万トンを生産し、約4割を輸出する日本と市場構造が対照的だ。

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