二期連続の赤字から一転、最高益の見通しとなった国内最大手の日本製鉄。価格交渉も強気の姿勢が鮮明に。変貌の背景には何があるのか。
長らく低迷してきた鉄鋼産業が急復活している。
日本製鉄は2019年度、2020年度と2期連続で最終赤字に沈んだが、2021年度は5200億円の過去最高益を見込んでいる。だが、財務を統括する森高弘副社長は「世界の鉄鋼メーカーはもっと儲かっているところがいくらでもある」と満足する様子はない。
業績に加えて強い交渉力も復活した。今夏には国内大口顧客との取引で供給制限を辞さない姿勢を示し、トヨタ自動車との交渉で上期に約2割の値上げを勝ち取った。また、10月には電磁鋼板の特許を侵害したとして、中国の大手鉄鋼メーカー、宝山鋼鉄とトヨタを訴えて世間を驚かせた。
業績のV字回復やこれまでにない強気の交渉姿勢にはどんな背景があるのか。森高弘副社長に聞いた。
――2019年度は4000億円を越える赤字でしたが、今期の業績は絶好調です。V字回復の要因は何でしょうか。
2020年に大幅なコスト削減を行ったことが大きい。また、長らく取り組んできた(国内大口顧客との相対価格である)ひも付きの価格是正が進展をみた。
生産能力を絞り込んだことよる注文選択(付加価値の高い製品を作る)の効果もあった。選択と集中を徹底して、海外事業が収益力を向上できている。外部要因だけでなく、自助努力も大きい。
下期も「相当な値上げ」
――近年、国内の生産能力の削減を進めてきました。この9月末には鉄鋼メーカーの象徴である高炉を3基休止しました。なぜこのタイミングだったのでしょうか。
2年連続で大幅な赤字を計上したことが大きい。今も、中期的に日本でどんどん受注が増えるとも見ていないが、当時(国内生産設備の構造対策を発表した2020年2月)は、あのままでは立ちゆかなくなるという危機感が社内にあった。
――長年の課題だったひも付き価格の是正が大きく進みました。生産能力の削減によって過去にない強い態度で交渉できたのでしょうか。
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