EV時代に自動車の価値を決めるのは運転支援技術などの機能更新が随時可能なソフトウェア。そうした将来を見据えてホンダが模索するのが、「売り切り型ビジネスモデル」の転換だ。
「右車線を確認してください。車線変更します」。ピピッという告知音の後に音声が流れた。指示に従って右側を確認すると、ハンドルが自動で操作され車線変更がスムーズに行われた。この間、手はハンドルに触れていない。これは、ホンダが研究開発を進める運転支援技術の一部だ。
2022年11月下旬、ホンダは次世代運転技術の発表・体験会を「栃木プルービンググラウンド」で開いた。独自の人工知能(AI)を用い、渋滞時に一般道でのハンドレスでの運転支援を可能とする。2020年代半ばから新車に順次適用していく。ドライバーの異常を把握して事故のリスクを未然に防ぐ技術を含めた、高度な運転支援機能も2024年以降に搭載予定だ。
新たなサービスや技術を開発するソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部執行職の玉川裕氏は、「事故に遭わなくなるというのが大きな価値になる」と強調する。
このような新たな技術は、5~6年に一度行う車のフルモデルチェンジの際に搭載するのが一般的だった。だが今後は、「OTA(Over The Air)」と呼ばれる無線経由のソフトウェア更新などを通じて、後から機能が追加されるケースも増えてくる。アプリのダウンロードで機能を随時拡充できるスマートフォンのように、自動車もなるわけだ。
ソフトウェアを4輪事業に匹敵する利益に
OTAで提供するソフトは安全技術にとどまらない。自動運転技術でハンドルから手を離したり前方から視線をそらしたりすることが普通になれば、自動走行中に動画視聴を楽しむなどドライバーの車内での過ごし方も変わる。OTA以外でも、ホンダはエンタテイメントコンテンツの準備をしており、ソニーグループとの提携はその一つとなる。
定額課金(サブスクリプション)型も交え、これらソフトウェアのサービスを展開することで、2030年に2000億円程度の利益を稼ぐ――。これはホンダの社内で密かに掲げられている目標で、現在の4輪事業全体の営業利益に匹敵する水準だ。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら