推薦入試で"青田買い"に走る私大定員割れの深刻 早く確実な合格という大人の都合が学力を削ぐ
受験生が睡眠時間を削って入試当日まで必死に勉強をする――そんな大学受験の姿が今や過去のものになりつつある。
少子化時代を反映して18歳人口は1990年代以降減り続けているにもかかわらず、大学の定員は微増を続けている。その結果、文部科学省などが発表した数字を見ると、2021年の国公私立大学の入学定員の合計は62.4万人だが志願者数は65.8万人。実質的な倍率は1.05倍でしかない。
つまり大学の入学定員と志願者数はほとんど同じなのだ。
大手予備校などの推計では、今後も大学の入学定員が増え続ける一方で18歳人口が減るため、早ければ2024年に入学定員が志願者数を上回る「全入時代」に突入するという。
その先は18歳人口がさらに減っていくため、2040年には大学志願者が約44万人にまで減る見通しだという。つまり志願者が約20万人も減少するのだ。大学入試はますます楽になっていくが、喜んでばかりはいられない。
「全入時代」の私大は学生確保に苦しむ
ここで問題になるのは大学の経営だ。いくら立派なキャンパスを作っても学生が入学しなければ大学経営は成り立たない。少子化時代は大学にとって厳しい生存競争の時代到来を意味しているのだ。
深刻な事態はすでに現実のものとなっている。
日本の大学は国立大学、公立大学、私立大学などに分かれているが、大学数や学生数が圧倒的に多いのは私立大学で、全国約800の大学のうち私立大学は4分の3の600校以上、学生数でも同程度の割合を占めている(2022年)。
そして私立大学のうち、実際に入学した学生が定員に満たなかった大学が2022年には約半数の47.5%と過去最高を記録したのだ。しかも充足率が80%未満の大学が19.4%で、前年の14.2%から大幅に上昇している。全入時代を前に、多くの私大はすでに学生確保に苦しんでいるのだ。
たいていの受験生は1人で数校の試験を受け、複数に合格すれば多くが偏差値の高い大学を選ぶ。また東京など都市部の大学と地方の大学に合格すれば都市部の大学を選ぶ傾向が高い。
その結果、偏差値の低い大学や地方の私立大学に学生が集まりにくくなり定員割れが恒常化しているのだ。
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