推薦入試で"青田買い"に走る私大定員割れの深刻 早く確実な合格という大人の都合が学力を削ぐ
まず、大学の二極化が進んでいることだ。
推薦入試はすべての大学が積極的に導入しているわけではない。比較的偏差値の高い有名校の推薦入試の比率は相対的に低い。これらの大学は複数の科目の試験を実施し成績の順に合格を判定しており、入学者に占める推薦入試合格者の割合は4割台以下だ。
それに対して偏差値が低い大学、あるいは地方の小規模大学や女子大は6割以上と高い比率になっているところが目立つ。中には東京都内のある大学の学部のように入学定員170人のところ、一般選抜での入学者がわずか7人で残りの9割以上が全員推薦入試という例もある。
その結果、一般選抜中心の大学と、推薦入試中心の大学という二極化が進んでいるのだ。
ゆとり世代の二の舞にならないか
高校での授業にも変化が生まれている。
大学入試合格の結果がその学校の評価につながる私立高校はまだ一般選抜に力を入れているが、教員、父母共に安定志向の強い公立高校では推薦入試を重視し、授業でも一般選抜対策よりも、小論文や面接対策に比重を置くようになってきているという。
学校推薦型は、定期テスト結果の5段階評価の平均値が判断材料となるため、推薦入試を目指す生徒は定期テストに力を注ぐ傾向が強まる。定期テストは試験範囲が限定され、短期間集中的に学習すれば高い点数を取ることができる。広い範囲を体系的に学習することが必要な一般選抜対策の勉強とはかなり異なる。
さらに、推薦入試で合格する生徒は高校3年生の最後まで試験勉強をし続けなくて済む。進学先を早々と確定させるという意味では関係者にとってありがたい制度ではあるが、推薦入試合格者は高校3年生の後半の半年間、一般選抜を受ける同級生が一生懸命、勉強している脇で、何もしなくても卒業、進学できる。
その違いは大学入学後にはっきり表れる。推薦入試合格者と一般選抜合格者の大学入学後の成績を比較すると、後者のほうが優れている場合が多い。大学によってはこの差を少しでも縮めるために、推薦入試合格者に対して「入学前教育」と称して課題を課して提出させ、勉強を継続させるところも少なくない。
大学入試はかつて、単なる知識の詰め込み、暗記だけの勉強と批判され、入試問題も難問奇問ばかりと改善を求められた。入試にそうした欠点があることは事実だ。しかし、その解決策が推薦入試というわけではない。
推薦入試が広がったのは、入学生確保を目指す大学、確実に進学させたい高校、早く安心したい父母と、大人の論理や都合でしかない。そして、少子化という時代の波を受けて、受験生の「青田買い」ともいえる推薦入試は今後もさらに拡大していくだろう。
かつて文科省が進めたゆとり教育を受けた子供たちは、相対的に学力が低く、競争心が乏しく、自主的に仕事をせず指示を待つ傾向があるなどとして「ゆとり世代」と揶揄された。推薦入試で大学に進学した若者が「推薦入試世代」などと揶揄されることがないことを祈る。
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