校則に反発した生徒に校長が伝えた「ある一言」 子どもたちが主体となって物事を動かす意味

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ところで、校則を変えようと動いている生徒も、学校説明会やワークショップに積極的に参加している生徒も、みんな受け身ではなく当事者として向き合っています。

受け身になると「こんなはずじゃなかった」となります。だから私は学校説明会で、

「うちは何も約束できません。ただ、問題があれば一緒に解決することはできます」

「本校はクレームはなしでお願いします。そのかわりプランを出してもらったら一緒にやりましょう」

と伝えています。

生徒からの「授業改善計画書」

生徒たちが授業改善提案書をもってきたことがありました。英語のライティングの授業改善案でした。担当はベテランの女性教員で、人柄は素晴らしいのですが、正直いって、授業は教科書を読んでいるだけでした。

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授業改善提案書だと聞いたときには、不満が述べられているだけと思ったのですが、読んでみると、提案は先生への要望だけではありませんでした。自分たちが授業に参加できていないところに問題がある、という指摘がありました。

先生は講義をするだけではなく、生徒に作業をさせて、そのあとにワンポイントでアドバイスをしてください、そうすれば私たちはフルパワーでやります、と書いてありました。不平不満をいうのでなく、授業のデザイン案を示し、先生と生徒の役割が明確に書かれていました。

ベテランの先生にしてみれば、生徒から突き付けられた授業改善案など気持ちのいいものではなかったでしょうが、先生は提案を受け入れ、授業を改善してくれました。

新しい授業のあと、その先生が「教員生活30年目にしてはじめて、顔を上げて授業に参加している生徒を見ることができました」と、驚いた表情で話されていたことが、とても印象に残っています。

くり返しになりますが、私がつくろうとしている「ミライの学校」は、生徒も先生も、失敗を恐れず、チャレンジできる「みんなでつくる学校」です。学校の主役は生徒です。肝腎なのは、チャレンジできる学校というコンセプトに共感し、一緒にチャレンジしてくれる仲間を増やしていくことです。チャレンジを恐れないマインドを身につけた生徒や先生たちが、さまざまな場面で、学校を活気づけてくれているのです。

日野田 直彦 千代田国際中学校校長

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ひのだ なおひこ / Naohiko Hinoda

1977年大阪府生まれ。幼少期をタイで過ごし、帰国後は欧米の最先端の教育に取り組む同志社国際でもまれる。同志社大学卒業後、進学塾、私立中高の新規立ち上げを経て、公立・私立の校長に。36歳で校長になった大阪府立箕面高校では、多数の生徒が海外大学に進学し注目を集める。武蔵野大学中学・高等学校では、9年で5人も校長が交代する倒産寸前の状態からV字回復させ、学校説明会には毎年多くの親子が参加している。現在は学校再建のロールモデルを構築すべく奮闘中。著書『なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか!?』(IBCパブリッシング)、『東大よりも世界に近い学校』(TAC出版)。

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