移住人気先の静岡で活気が失われていく納得理由 移住者数は年々増加の快挙も解決しない課題

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こうした若者流出の現状に県も、教育、雇用、婚活などさまざまな対策を講じてきた。最近では、企業誘致のターゲットとして情報通信やデザインなど一部のサービス業を対象とした補助金制度を新設する方針で新年度の予算案に必要経費を盛り込む。

県の担当者は「若い世代のニーズに応えることが課題です。雇用の受け皿を確保していきたい。デジタル人材の育成のために大学での講座開設なども実施しています」と説明するが、若者の意識改革、行動変容につなげられるかどうか。

県内の大学再編問題で紛糾

若者流出が続く中、ここへきて新たな問題が浮上している。静岡大学と浜松医科大学の再編・統合問題が大モメとなっているのだ。2019年に法人を1つに統合したうえで、静岡地区と浜松地区に大学2つを置く「1法人2大学」の再編案で合意していたのだが、静岡大学側の反対論が根強く、延期となっていた。

その後、静岡大学の学長が新たな私案を打ち出すと、推進派の鈴木康友・浜松市長が「学長として失格」と発言、浜松市は期成同盟会を設立した。

一方、静岡市の田辺信宏市長は「期成同盟会を作ることはいかがなものかと思う」と述べた。ゴタゴタが続けば、双方の大学にとってイメージダウンとなって、若者流出を加速させかねない。

コロナ禍の期間中、都会から地方への移住者がある程度増えたことは事実だ。しかし、感染状況が落ち着くにつれ、地方から東京へと向かう若者らの潮流は再び大きなものとなり、移住者効果を完全にのみ込んでしまったのである。

これは静岡県に限った話ではない。東京、神奈川、埼玉、千葉の「東京圏」は2019年以来3年ぶりに、それ以外の全ての道府県(43道府県)に対し、転入超過となった。全国各地から東京圏への流入が止まらないのだ。移住の2文字がどんどんかすんでいくようだ。

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