「心の病気に免疫がない」からこそ知ってほしい事 コロナ、SNS…日常の不安から心の健康を守る

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メンタルヘルス
ストレス、不安に圧し潰されないように(写真:zon/PIXTA)
37カ国刊行のベストセラー『一番大切なのに誰も教えてくれない メンタルマネジメント大全』著者、ジュリー・スミス博士はイギリス、ハンプシャー州でセラピーを営む心理学者、臨床心理士。
2019年11月、メンタルヘルスのさまざまな問題について、わかりやすいアドバイスを求める人々へ向け動画投稿を始めたところ、大きな反響を呼び、BBCほか多くのメディアにも取り上げられる注目の存在となりました。現在のSNS総フォロワー数は300万、寄せられた「いいね」の数は2000万を超え、TikTok「トップクリエイター100人」にも選出されています。
ソーシャルメディアやコロナ禍がメンタルヘルスに及ぼす影響、心の健康のために本当に役立つツールとは――。『ガーディアン』紙で掲載されたジュリー・スミスさんのインタビューを和訳してお届けします。(日本語訳:野中香方子)

エビデンスに基づいたメンタルヘルスの本

――自己啓発本が多く出版されているなかで、あなたの本はなぜベストセラーになったのでしょうか?

エビデンスに基づいていることが評価されたのでしょう。わたしは臨床心理学者なので、この本に書いたことは最新の研究によって精査されています。その内容はセラピーでクライアントが教わることであり、誰もが使える、より良く生きるために必要なスキルでもあります。

誰でも、気分が落ち込む日や、ストレスや悲嘆、不安を強く感じる日があります。それは人間として当然のことなのですが、正しいスキルを知らないと、対処できなかったり、圧倒されてしまったりします。また、パンデミックを経験している今、多くの人は、「どうすればこの状況を切り抜けられるのか?」と考えていることでしょう。

――なぜソーシャルメディアを利用しようと思ったのですか?

セラピーをしていて感じたのは、クライアントの大半は、セラピーの一部が教育であることに気づいていないということです。クライアントはセラピーで多くのことを語り、自らの問題に取り組みますが、同時にクライアントは心の仕組みについても少しずつ学び、どうすれば気分や感情をうまくコントロールできるか、どうすれば日々のメンタルヘルスを良好に保てるかを学ぶことにもなります。

そうしたセラピーの教育的側面はきわめて有益で、クライアントはメンタルヘルスをコントロールする能力がアップしたことを実感します。ですから、わたしはセラピーを終えて帰宅すると、いつも夫にこう言っていました。「こうした知識を誰もがもっと気軽に利用できるといいのに。基本的なことを知るためにわざわざわたしのところに来る必要はないわ」。すると夫はこう返しました。「だったら、そうしよう。YouTubeか何かにアップすればいいんだ」。

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