教職のやりがい発信するよりも「不安解消」が先決、誠実さと行動力が必要 学生や社会人の本音「4つの抵抗」なくすには

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2025年度(2024年度実施)教員採用試験の出願が始まっている。これまでは7月に筆記試験、8月に面接、9〜10月に合格発表・内定というスケジュールが一般的だったが、採用倍率の低下を食い止めようと前倒しする自治体が増えている。昨年、採用スケジュールが早い民間企業に人材が流れるのを防ごうと、文部科学省が要請した影響だが、教員採用試験を複数回行う自治体も出てきている。はたして志願者は増えるのか。「募集の仕方自体に課題があるのでは」と話す、教育研究家の妹尾昌俊氏に解説してもらった。

ベンチに誰もいない

昨今さまざまな業界で人手不足だが、学校の先生のなり手不足もたいへん深刻だ。全国公立学校教頭会の調査によると、2022年度は約2割の公立小中学校で欠員が発生していた。欠員、あるいは教員不足とは、本来は配置される予定だった教員が配置されていない状況を指す。予算のせいではなく、先生になってくれる人が見つからないためだ。

私が参加している「#教員不足をなくそう緊急アクション」の調査でも2022年度、2023年度ともに、年度はじめよりも後半になるにつれて、教員不足が拡大している傾向を確認している。産育休や病気休職で空きが出ても、講師バンクは底をついており、年度途中から学校で働いてくれませんか?と言われても、都合のつく人はいないためだ。

スポーツチームに例えると、本来バックアップ要員としてベンチに控えておいてもらうはずの選手(非正規の教員)を4月当初からスタメンとして使っていて、ベンチに誰もいない状態、それがいま全国各地で起きていることに近い。

そんなに人がいないなら、ICTを活用すればいい?

どうしていけば、よいだろうか。特効薬があるわけではないが、1つの案は、なるべく人手に依存しない仕組みや仕事にしていくことだろう。企業でも無人レジなどの工夫は増えてきた。

例えば、全国約2万校近くもある小学校の各教室で、個々の教員が「ごんぎつね」の授業をする必要はあるのか? うまい先生の動画を活用してはどうか。そんなアイデアが政治家や評論家の一部から、たまに出てくる。

これは、ICTの活用という点で一理あるが、単純にいく話ではない。動画教材や学習アプリを使って自律的に学習できる子はいいが、そういう子たちばかりではないからだ。大人だって、やってみれば実感するはずだ。いくらコンテンツやツールが身近にあっても、学び続けるのは難しいと。ICT任せだけでは、動機づけとしては弱い場合も多い。

確かに、独学や自分のペースで学びを進めることのよさもあるが、学びには子ども同士や教員と子どもとの間の相互作用も重要なので、リアルに分がある。とりわけ、探究的な学びでは動画教材やアプリだけで済ませるのは難しいだろう。

つまり、もう少し教員依存ではないやり方や学びのあり方を模索していく余地は大いにあるとはいえ、一定の教員数の確保は必要ということだ。では、先生になってくれる人を増やすには、どうすればよいだろうか。

妹尾昌俊(せのお・まさとし)
教育研究家、一般社団法人ライフ&ワーク代表
徳島県出身。野村総合研究所を経て、2016年に独立。全国各地の教育現場を訪れて講演、研修、コンサルティングなどを手がけている。学校業務改善アドバイザー(文部科学省委嘱のほか、埼玉県、横浜市、高知県等)、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員、スポーツ庁、文化庁において、部活動のあり方に関するガイドラインをつくる有識者会議の委員も務めた。Yahoo!ニュースオーサー。主な著書に『校長先生、教頭先生、そのお悩み解決できます!』『先生を、死なせない。』(ともに教育開発研究所)、『教師崩壊』『教師と学校の失敗学』(ともにPHP)、『学校をおもしろくする思考法』『変わる学校、変わらない学校』(ともに学事出版)など多数。5人の子育て中
(写真は本人提供)

採用試験前倒しはマイナスのほうが大きい?

公立学校の場合、採用を担当しているのは、都道府県と政令市の教育委員会だ(大阪府豊能地区は協議会)。各地の教育委員会は、あの手この手で採用試験の受験者を増やそうと工夫している。そのよさはある一方で、気がかりなところもある。

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