子どもの好きを伸ばし一芸に秀でる才能育てよ 教育は、もっと「民間の力」を活用すべき

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コロナ禍の中、新学習指導要領やGIGAスクール構想が推進されるなど教育改革は新たな局面を迎えようとしている。現状の教育から脱皮し、新たな教育の形をどのようにつくればいいのか。今、教育現場では試行錯誤が続いている。こうした中、経済界のキーパーソンは日本の教育にどのような課題感を持っているのか。今回は、内閣府経済財政諮問会議議員や経団連役員ほか、内外の社会課題解決に向けて提言を続けている経営者の1人であるサントリーホールディングス代表取締役社長の新浪剛史氏に話を聞いた。

サントリーでも一芸に秀でた面白い人材を採っていきたい

――人口減少、少子化が進む中で、現在の経済規模を維持するために日本の教育はどう変わるべきだとお考えでしょうか。

私は、子どもたちが小中学校のころから自分の好きなもの、得意なものに傾注できる、それが勉強の楽しみになっていくべきだと考えています。一芸に秀でるといわれるように、子どもたちが好きなものに熱中できる環境をつくっていく。それを支える仕組みとして、子どもたちの人格を支える人間性、道徳を育んでいくことも欠かせません。

その意味では、例えばボーディングスクール(寮制学校)のようなところで学ぶ機会があってもいいのかもしれません。“同じ釜の飯を食う”といった共同生活の機会を与え、子どもたちに人と協力して何かをやらせてみる。そんな人との交わりの中で、自立への芽生えをもたらしてくれるような体験をさせたほうがいいと考えています。

――子どもたちの好きなものを伸ばし、それと同時に人間性を高めていく教育が必要だということですね。

そうです。これからサントリーでも、一芸に秀でた面白い人材を採っていきたいと考えています。また何よりも大事な自然の摂理についても、大都市ばかりにいては真に理解することはできません。実際に地域に赴いて山や川など自然と触れ合うことも必要でしょう。私たちの事業においても「水」は非常に重要なものであり、自然の摂理を知るうえでも「水」の大切さを知ることは欠かせないことです。

この水の大切さを子どもたちに伝えるために、自然体験プログラム「森と水の学校」、小学校に当社講師が出向いて行う「出張授業」という2つの「水育」プログラムを2004年から行っており、今まで約19万人に受講いただきました。この取り組みは、国内に限らず、タイ、ベトナム、インドネシアでも展開しています。

サントリーホールディングス 代表取締役社長 新浪剛史

また、多様性を養うという意味では、日本人だけでなく、アジアなどさまざまな国々の子どもたちと学べるような教育も、これから積極的に進めるべきだと考えています。そのためには、資金面を支える企業の寄付や社会的な基金も必要でしょう。これからは教育分野にもっと投資を行って、周囲が教育を支えていく仕組みをつくることが大切だと考えています。

 現代史こそ、今の海外情勢を知るうえで最も必要

――経済界から見たとき、小中高校の教育に対する要望はありますか。

これからは日本語以外に英語や中国語など、もう1つの言語を習得することも大切になってきます。そして、高校を卒業するまでに自分が好きなものを見つけ、もし一芸に秀でる才能があるのならば、大学に行かずとも専門学校などを経て海外留学してもいい。そのための仕組みづくりや資金支援は国が担っていく。そうした中から、修士号、博士号を取得する人が出てきてほしいと考えています。

科学やエンジニアリング、または経営学の分野は圧倒的にアメリカのほうが進んでいます。これからデジタル化時代に進むことを考えれば、日本という国の国際競争力を高めるうえでも、世界を視野に人材を育成していくことは大事なことだと考えています。

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