保育のDXで「教育の質向上」に挑む起業家の正体 「0歳児からの成長データ」で「要録」に変革を

✎ 1〜 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 最新
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
GIGAスクール構想の下、小中学校では教育の情報化が進んでいるが、今後は保育園や幼稚園でのICT活用も加速していくだろう。そうした中、先駆けてDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて、保育・育児に関連する社会課題の解決を目指し、ICTサービスを提供しているのが、ユニファだ。同社は独自のテクノロジーを武器に、日本の就学前教育をどのように変えようとしているのか。社会起業家兼創業社長として同社を率いる代表取締役CEOの土岐泰之氏に話を聞いた。

家族だけで幸せになることが無理な時代

「保育×DX」で保育現場を変革しようとしているユニファ。現在、乳幼児の見守りサービスや検温などを行う「ルクミー」ほか、登降園管理や保育者ケアのICTサービス「キッズリー」を中心に事業展開している。派遣スタッフを含め従業員数は約200人、東京都と名古屋を拠点に全国展開を図るなどサービス導入数はすでに1万件超と右肩上がりで成長しており、保育ICT業界におけるリーディングカンパニーとして注目されている。

そんな同社のパーパス(存在意義)は「家族の幸せを生み出す あたらしい社会インフラを世界中で創り出す」というもの。創業者である土岐泰之氏は、このビジョンにどのようにたどり着き、起業するに至ったのだろうか。

土岐氏は1980年生まれ。大学卒業後、総合商社や外資系戦略コンサルティングファームなどで働いていたが、その間、日本で子育てをすることがいかに大変かという現実に直面した。

ユニファ代表取締役CEOの土岐泰之氏

「私の仕事の拠点は東京、妻は愛知県豊田市。妻の産休中は東京で一緒に過ごせましたが、彼女が復職して私が単身赴任となると、家族として暮らしていくのは難しいと感じました。そこで私がキャリアを捨てて会社を辞め、豊田市へ引っ越したのです。その後2人目の子どもにも恵まれましたが、夫婦共働きでの子育ては本当にしんどかった。私がほぼ主夫を担っていた時期もありました。

今の時代、家族の幸せを家族だけで実現することは無理です。子育てを通じて、さまざまな手助けをしてくれるサービスや施設などを点と線でつながないとやっていけないことを痛感した経験から、家族を幸せにする新たな社会インフラをつくろうと思い起業しました」

保育士の仕事の多さに衝撃

まず目をつけたのは、家族内のコミュニケーションを活性化する写真だ。当時はスマホが普及し始めていたが、保育園では子どもたちの活動を保育士が写真に撮り、壁貼りして保護者に販売するアナログの手法をとる園が多かった。

「スマホ撮影で自動アップロードできる形にしてオンライン販売すれば保育者の仕事は効率化でき、AIの顔認識機能で検索しやすくすれば保護者も写真選びが快適になるのでは」と思った土岐氏は、2013年に保育園向けデジタル写真販売サービスを始めた。

しかし、しだいに保育士が写真撮影どころではなく、多くの仕事を抱えていることに気づく。大変なのは「家族」だけではなかった。家族を支える保育士の仕事は、乳幼児の午睡(昼寝)チェックや検温、日誌やカリキュラムの作成、保護者対応など幅広いことを知り衝撃を受けた。

とくに優先度が高いと感じたのが、午睡中の事故を防ぐための午睡チェックだ。保育士はつねに気を張っており、5分ごとに体の向きを確認し、矢印を手書きで記録する作業も現場の大きな負担となっていた。

みぞおち付近に付いている白く丸い機器が体動センサー(左)。手書き作業が自動に(右)
(写真はユニファ提供)
非接触で検温してすぐにデータ化できる体温計は、新型コロナ禍で好評 (写真はユニファ提供)
次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事